5.踊る指先

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 そんなことを考えながら赤い毛氈(もうせん)のひかれた書院へと入ると、私は、 「あれっ?」 見知った人物の姿を見つけて、瞬きをした。 「一色君、どうしてこんなところにいるのですか?」  書院の毛氈の上に正座をして、庭を眺めていたのは一色君だった。 「あれ?弥生さん?」  一色君も私の姿に気づき、意外な面持ちで目を見開く。 「どうしたの?こんなところで会うなんて奇遇じゃん」  一色君はすぐに破顔すると、私を手招き、自分の隣を叩いた。  私は誘われるまま一色君に近づくと、彼の隣に腰を下ろした。そして、もう一度、 「どうして等持院にいるのですか?」 と同じ質問をする。一色君が場違いだというわけではないが、一色君と寺はなんだかうまく結びつかない。 「俺、この寺好きなんだよね。すっげー静かで、落ち着くじゃん?時間あったら、たまにここにくるんだよ。弥生さん、あっちの霊光殿見た?マジすごくね?足利将軍勢ぞろいだぜ」  意外な答えが返ってきて私は驚きながらも、彼の問いかけに頷いた。
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