5.踊る指先

9/15

320人が本棚に入れています
本棚に追加
/290ページ
「今度は三条に行きますよぉ!」  つかさちゃんにぐいぐいと腕を引っ張られ、三条通に移動した。三条通は落ち着いたおしゃれな路面店が多く、 「ここなら美咲さんも気に入るんじゃないですかぁ?」 その内の一軒に入ると、つかさちゃんは自信ありげにそう言った。ここは今までに見てきた服屋より、対象とする年齢層が高いのか、派手すぎる服は無さそうだ。  つかさちゃんは早速ミモレ丈のプリーツスカートを手に取った。青と茶色のチェック柄は、今までつかさちゃんが勧めて来た服の中で、だいぶ大人しい方だ。 「あと、このブルーのカットソーを合わせて……」  鮮やかな空色のカットソーを手に取って広げ、私の体にあてる。 「うん、可愛い!」  鏡を見ると、今までの服の中で、一番顔写りが良い気がした。 「試着してみようかな……」  おずおずと言うと、 「うんうん!どんどん試着しましょっ!」 私がやっと乗り気になって来たと思ったのか、つかさちゃんが嬉しそうに笑った。  店員に試着室に案内され、つかさちゃんお勧めのコーディネートに腕を通す。 「どう……かな?」  恐る恐る外に出ると、つかさちゃんは目を丸くして、 「いい!可愛いですぅ!美咲さん!」 ぱちぱちと手を叩いた。 「それ、買いですよぉ。あと、こんなのも見繕ってみたので、着てみて下さぁい」  いつの間にか用意されていた赤色の花柄のスカートにレースのブラウスを押し付けられ、 「えっ……あ、うん」 私は戸惑いながら再び試着室に入った。 (花柄、可愛い)  柄物はあまり着たことがないので、新鮮だと思いながら試着し、もう一度、外に出てみると、 「美咲さん、すっごく可愛いですぅ!花柄、超、似合いますぅ!」 つかさちゃんは私を褒めちぎった後、今度はボーダーのカットソーにワイドパンツを差し出した。 「じゃあ、次はこれ!」 「えっ?まだ着るの?」 「どんどん着てください~!」  その後も、着替えるたびに褒めちぎるつかさちゃんの言葉に乗せられて、私は予算オーバーになるほど服を購入することになってしまった。
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!

320人が本棚に入れています
本棚に追加