3.猫とトライアングル

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3.猫とトライアングル

 翌日、私は昨日の出来事を思い返しながら、大学へ向かって歩いていた。これから毎週、柏木さんに会えるのだということばかり考えてしまい、気が付けば顔が緩んでいる。 (なんだか私、ハンドメイドのことにかこつけて、ただ、柏木さんに会いたいだけみたい……)  そんな考えが(よぎ)り、慌てて首を振った。浮ついた気持ちでいては、一生懸命アドバイスをしてくれている柏木さんに申し訳ない。  それでもやはり柏木さんのことばかり考えながら、東門から構内へ入った。講義が行われる校舎へ向かうため、東門近くの東側広場(芝生が植えられており、天気のいい日は、座ってのんびりとくつろいでいる学生が多い)を横目に通り過ぎ、西側広場(ベンチやテーブルが配置されている。食堂、コンビニに近く、昼ご飯を食べている学生も多い)に差し掛かった時、ニャーンという猫の声が聞こえた。  思わず足を止め、そちらを向くと、ベンチに座る男子学生の足元に、黒い猫がじゃれついているのが見えた。
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