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01. 光を帯びた人
ドアが開いた瞬間、湯気がふんわりと昇ったように、あたり一面が霞んで見えた。
汗のにおい、苛立ち、気だるさ。
電車は人々とともにそれらを吐き出し、ホームをたちまち不愉快という文字で埋め尽くしていく。
しかし、冷房の効いた車内から出て熱を帯びたコンクリートに足をつけると、高瀬夏生はほんの少しだけ、安堵するのだった。
例えるならば、冷えた足先をぬるま湯にそっと浸したような、心地よい感覚。
けれどそれが続くのもせいぜい数分の間で、改札を出た時には毛穴という毛穴から汗が吹き出ていた。
——夏が来た。
自分が生まれた季節。
一番、嫌いな季節。
Tシャツの裾を掴んで軽く仰いでみても、熱風が腹筋をうっすらとなぞるだけで、気休め程度にもならない。
雲ひとつない晴天とは裏腹に、なんとなく気持ちが曇るのは、これから会う相手のせいだろう。
あいつが自分をわざわざ外に呼び出すときは、ろくなことが起こらないから————
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