01. 光を帯びた人

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シャワーの流れる、勢いのよい音が鳴る。 「そういえば祥吾(しょうご)が、頼は元気にしてるかって言ってたよ」 シャワーの音で聞こえなかったのだろうか、ひと間あけて、頼がえ?と呟く。 溜めていた湯を抜く、排水口に水が吸い取られていく音を拾った。 「今、祥吾って言った……?」 「うん。あいつと数カ月前にばったり新宿で会ってさ。それ以来、たまに飲むようになった。時々、たか瀬にも来てくれるんだよ」 「……すごい偶然だね。会ったの何年ぶり?」 「高校卒業して以来だから、10年以上? 今は舞塚(まいづか)にある不動産会社で働いてるんだって」 椅子を起こされ、タオルで髪を揉まれる。 段差気をつけてね、という誘導に相槌を打ちながら、元の席まで戻った。 ————祥吾。 大して関心がないのかと思いきや、鏡越しの頼は、なにやら神妙な面持ちだ。 「そっか。祥吾くん……元気でやってるんだ」 関心がないはずがない。 何年経とうと、自分たちがを忘れられるはずがないのだ。 ドライヤーの熱風が地肌を温め、ケープ越しにじんわりと汗をかいてきた。 「今年は……もう行った?」 髪を触りながら、頼がぼんやりと言った。 夏生は首を横に振った。 「お盆あけて、しばらくしてから行こうと思ってるよ」 「今年は、俺もついていこうかな」 夏生は振り返って、直接、頼を見た。 頼はヘアワックスを手のひらで揉み込みながら、ただ夏生の視線を受け取っている。 フルーツ味のガムみたいな匂いが、ふんわりと漂った。 「花、何がいいかな」 独り言のように、頼が言う。 なにがいいのだろう。 花の種類など詳しくはないけれど、なるべく明るい花がいい。 髪を揉まれながら——夏生はゆっくりと目を閉じた。
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