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少年とアニメと記憶消去
「このアニメめちゃくちゃ面白かったなあ」
DVDをプレイヤーから取り出しながら、高校生の少年は感慨にふけっていた。
「あの裏切りはびっくりしたし、完全に騙されたなあ。終わり方も感動モノで本当に最高のアニメだったな」
そして思った。記憶を無くしてもう一度見たい、と。そんなことできるはずもないのだが、このアニメはそれくらい少年にとって心に残る作品となったのだ。
「何とかしてもう一度あの感動を味わえないか……」
しばらく少年は考え続け、ある一つの結論を出した。
「よし、記憶が消せる薬を作ろう!」
少年はそれからの人生の全てを、記憶消去の薬の開発に注ぎ込んだ。死に物狂いで勉強し、世界トップクラスの大学へ進学。化学者としての道を歩み始め、最高の設備と人員を使って何十年も薬の研究を続けた。
そしてついにその時が来た。
「ようやく……ようやく完成したぞ……!」
彼は数々の困難を執念で乗り越え、記憶消去の薬を完成させた。
「この薬を使えば自由に記憶が消せる……!」
彼の瞳からは涙がこぼれていた。周りの人々は温かい目とにこやかな表情でその様子を見守っていた。
そしてふと、ある研究員が彼へ言葉をかけた。
「本当に良かったですね、博士! ところで博士はなぜそんなに記憶消去の薬にこだわっていたのですか?」
「え? それは…………」
彼の涙が止まった。
「あれ? ……………何でだっけ?」
長い年月が、彼の目的を忘れさせてしまったのである。
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