初めての会話

5/12
331人が本棚に入れています
本棚に追加
/718ページ
昼休み 健太はいつも校舎の脇にあるベンチで昼食を取っていた。 その日はパンをかじりながら生徒手帳を見て五時間目の授業を確認すると 『英語か〜、眠くなるのは必至だぞ………』 生徒手帳をポケットにしまいながら 『寝てもバレない方法はないもんなのか………』 あの〜……… 『まぶたに黒ペンで目を描くか………って絶対にバレる………』 あの〜……… 『目を開けたまま身体は寝る………そんな事が出来たらテレビに出てそれだけで稼げるって………』 あの〜……… 『ん?誰かが俺を呼んでいる………誰だ………って、上杉さんッッッ⁉︎なぜここにッッッ⁉︎』 そこには上杉が立っていた。驚きを隠せなかった健太はまだ心臓がバクバクな状態で彼女に 『い、いつからここに………?』 上杉は笑いをこらえて 『ま、まぶたに黒ペンで………の辺りから………』 健太は顔を赤くし咳払いをし 『コホン………もちろん冗談だからね。』 『クスクス………永倉君って面白いですね。』 彼女は健太の言葉に笑ってくれた。 『それはそうと、昼休みにどうした?』 『そうでした、そうでした………』 上杉は持っていた手下げ袋の中身をだし 『今日の朝、家でお弁当を作ってきたのですが、私の手作りで良かったら食べて頂けませんか?』 『へっ?今何と………?』 健太は上杉の発した言葉を今まで言われた経験がなかったので信じられない様子で聞き直した。 上杉はもう一度 『ですから、私の手作りお弁当で良ければ食べませんか?………嫌なら持って帰ります………』 彼女は弁当箱を手下げ袋にしまうと健太は 『それ、本当に俺で良いの?』 上杉は顔を上げ健太を見て 『はい、今日早起きして永倉君の為に作ったので食べて下さい。』 健太は上杉にお礼を言って手作り弁当をもらって 『今まで言われた事なかったから………ありがとう。それじゃ遠慮なく頂きます。』 健太は弁当を食べると 『今まで食べた弁当より遥かに美味いっ‼︎』 上杉は照れながら 『永倉君って大袈裟です。私のお弁当が一番だなんて………』 健太は弁当を食べながら 『俺は嘘は言わないよ。思った事をそのまま言葉にしただけだよ。』
/718ページ

最初のコメントを投稿しよう!