由華の言い分 2

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そのマフラーは少し変わった形をしていた。 片方の端に穴が空いていて、もう片方の端を突っ込むような形になっていて、首にぐるぐるっと数回巻き付ける長さも無く、フェイスタオルの長さよりも短かった。 編み目の粗さから見ても、既製品ではない。 タグもついていないし、どう見ても手作りだ。 誰かから借りたり、落とし物を拾ったのかな、とも思ったが、肌に直接触れるものだからか、まずマフラーを借りることはないだろうし、駅などで拾ったら自宅に持ち帰らず『落とし物』として届けるだろう。 そこまで考えて、とある事実にはっと気付いた。 「……そう言えば、(さとし)君の誕生日、一昨日やったやんーー……」 本当は当日一緒にお祝いしたかったが、遠距離恋愛中の身。 そう簡単にはいかない。 当然のことながら、お互い仕事がある。 彼の誕生日を無視していた訳では無かったが、一緒に祝うことは出来なかった。 とりあえず、当日は私から電話を掛けて「おめでとう」とは言った。 だが、今、丁度、繁忙期の理君は、かなり仕事が立て込んでいたのか、まだ仕事中だったようで殆ど話をすることも出来ぬ間に(せわ)しなく彼は電話を切ったのだ。 今日だって残業しているのか、既に定時も過ぎているというのに連絡も無く、まだ帰ってくる様子も無い。 少しでも彼の顔を見て「おめでとう」と言いたかった私は前もって仕事を済ませ、金曜日に半日有給を取り、夕方前に(ようや)く彼の居る東京へとやってきたのだ。 少し早目に来て、理君が帰ってくる迄に手料理を作って待っているつもりだった。 その為に材料も購入した。 しかし、コレを見た瞬間、そんな考えはどこかへ行ってしまった。 ()ずは、誰から貰ったモノなのか、どこかに手がかりらしきものはないか探してみることにする。 紙袋を逆さまにしてみた。 ……何も出てこない。 手紙なども無さそうだ。
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