由華の言い分 2

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由華の言い分 2

遠距離恋愛中の彼からは彼のマンションの合鍵を貰っていた。 「仕事で遅くなるし寒いから家で待ってて」と言われたので、先に彼の家に行って待とうとしたらリビングに入った瞬間、私はソレに遭遇した。 ソレはダイニングテーブルの上に堂々と隠れることも無く鎮座していた。 「……何なんコレ?」 取っ手付きの紙袋がテーブルの真ん中にトンと置かれている。 彼は男の人にしては珍しく(?)とても綺麗好きで、いつ遊びに来ても部屋が片付いているので、テーブルの上にモノが置いてあること自体かなり珍しいことだった。 取っ手の間から覗けば、濃いグレー色をしたモヘア調のウール製品が見えた。 気になって、ズルズルと引っ張り出してみる。 「……マフラー?」 私は首を傾げる。 彼の持ち物の中でも見たことも無い代物(しろもの)。 そもそも、付き合って何度目かの冬を迎えるが、彼がマフラーを身に付けているのを見たことが無い。 見る度に首が寒そうだな、寒くないのかな?と思い、気になっていたのて覚えていた。
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