136人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
由華の言い分 2
遠距離恋愛中の彼からは彼のマンションの合鍵を貰っていた。
「仕事で遅くなるし寒いから家で待ってて」と言われたので、先に彼の家に行って待とうとしたらリビングに入った瞬間、私はソレに遭遇した。
ソレはダイニングテーブルの上に堂々と隠れることも無く鎮座していた。
「……何なんコレ?」
取っ手付きの紙袋がテーブルの真ん中にトンと置かれている。
彼は男の人にしては珍しく(?)とても綺麗好きで、いつ遊びに来ても部屋が片付いているので、テーブルの上にモノが置いてあること自体かなり珍しいことだった。
取っ手の間から覗けば、濃いグレー色をしたモヘア調のウール製品が見えた。
気になって、ズルズルと引っ張り出してみる。
「……マフラー?」
私は首を傾げる。
彼の持ち物の中でも見たことも無い代物。
そもそも、付き合って何度目かの冬を迎えるが、彼がマフラーを身に付けているのを見たことが無い。
見る度に首が寒そうだな、寒くないのかな?と思い、気になっていたのて覚えていた。
最初のコメントを投稿しよう!