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私は椅子に座り、ダイニングテーブルの上に置いたマフラーと、にらめっこする形で対峙する。
そもそも、コレは一体、誰から貰った手作りの品なのだろうか?
「……会社の人……やろか?」
あり得る。
理君は、ああ見えて同期の中でも仕事も出来、出世頭だ。
そして、……モテる。
先輩、同期、後輩……全てあり得る気がしてきた。
「……取引先の人かもしれへん」
それも、……あり得る。
理君は、ああ見えて『可愛らしい顔立ち』と言われる部類だ。
そして、……モテる。
一目惚れされることもよくある。
「……それやったら、よく知らへん人とか……?」
……それも、まぁ……あり得る。
理君は困っている人を放っておけず、率先的に助けるタイプだ。
感謝され待ち伏せされて、デートに誘われた場面も何度か目撃してきた。
つまり、……モテる。
「……百歩譲って……やけど、理君のおかあさん……?」
……それも、あり得なくは無い。
前に紹介してもらった時は、息子に対して溺愛してる感じは一切しないおかあさんではあったけど、人は見かけによらない。
そして、理君は優しい。
親が作ったモノを粗雑に扱うタイプではない。
そして、勿論、他人から貰ったモノも、だ。
彼の行動全てが『モテる』部分に直結してる気がしてくる。
「……」
どれもこれも、彼女持ちの三十路手前の成人男性が手作りのモノとして貰うには微妙……私の中では正直アウトになる気がした。
ーーと言うのも、先程から目の前に置かれたマフラーが私に語り掛けてくるのだ。
『アナタは知らないでしょうけど、ワタシという存在が理君の陰にはあるのよ』
まるで、宣戦布告のようにダイニングテーブルの上に置かれたマフラー。
「カーンっ!」と、どこかでゴングが鳴った気がした。
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