137人が本棚に入れています
本棚に追加
理の言い分 1
言い訳がましいかもしれないが、言わせて欲しい。
俺は彼女が大好きだった。
過去形じゃない。
今でも勿論、大好きだ。
入社式で彼女を見た途端、一際、目立つ彼女に目を奪われた。
俺の一目惚れだった。
数ヶ月に渡る研修期間中に外堀を埋めるように彼女と仲良くなり、正式な配属先が決まる迄に彼女と付き合えることになって、俺は浮かれていた。
だから、失念していた。
彼女の出身が大阪だった、ということに――――。
神様は残酷だ。
会社側の配慮なのかは分からないが、俺の配属先は東京、彼女の配属先は大阪になり、付き合ってすぐに遠距離恋愛が始まった。
#
彼女と付き合う内に判明したことがある。
彼女の好きなタイプは俺とは真逆なタイプだった。
体育会系マッチョと言われる人達。
日本でラグビーのワールドカップがあったが、ああいう人達が好きらしい。
……俺とは正反対。
俺は最近人気が出てきた(?)らしい『可愛い系男子』と言われるタイプだ。
幼い頃はよく女の子に間違えられたし、今でも実際の年齢よりも、かなり下に見られ、三十路手前となった今でも大学生……下手をすれば高校生に間違えられることまである。
彼女のタイプとは、自分が両極端の位置にいるタイプだと認識していた。
だからこそ、彼女に知られる訳にはいかなかった。
……俺の趣味。
遠距離恋愛なことに、この時ばかりは感謝した。
だから、ただひたすらに、ひた隠しにした。
付き合い始めの頃はそれで良かったんだ……。
それで――――。
最初のコメントを投稿しよう!