理の言い分 2

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理の言い分 2

由華と付き合って数年が経過した。 遠距離恋愛だったし、彼女は家族と一緒に住んでいた為、交際を特別隠す必要性も感じなかったから、お互いの両親に既に挨拶もしていた。 子供のことを考えると、そろそろ結婚を考えるタイミングになってきた、と思う。 しかし、そこで問題が発生した。 俺の趣味をどう彼女に告げるか、だ。 俺の部屋がいつも片付いていたのもあったのか、特に彼女が俺の部屋の中を片付けたりすることも無く、俺の趣味に彼女は気付かないままだった。 普段から自分が冬に使用するものに限って、ほぼ全て手作りしてきたが、彼女に会う時だけは既製品のものを着たり、小物類は一切、身に着けないようにしていた。 ただ結婚するとなると、流石(さすが)に俺の趣味を隠し通すことは不可能だと思った。 そこで、俺は一芝居打つことにしたのだ――――。 # 「さぁ、これで準備万端、完璧だ……っ!」 俺はマフラーが入った紙袋を、そっとテープルの上に置いた。 好奇心旺盛な彼女はコレが気になって必ず中身を見るだろう。 そこに丁度帰ってきた俺は言うのだ。 『俺達の子供の為に練習してるところなんだ、と――――』 わざと粗目に編んだ編目(あみめ)は、目の大きさもバラバラで、いかにも初心者らしさを醸し出してくれている。 『編み物初心者』と説明すれば、数年間、俺の趣味を彼女にわざと黙っていたことも、問い詰められることもない。 プロポーズの布石まで打ち、完璧なシナリオだ。 彼女は夕方には東京に着くらしい。 俺もその時間に合わせて、帰宅しようと思う。 俺はにこやかに笑いつつ今晩のことを考え、意気揚々と玄関の鍵を閉めた。
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