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俺、西嶋宗親(にしじま むねちか)は、3月に大学を卒業し、4月からは養父が社長をしている西光不動産で働き始めた。半月は本社で他の新人と研修を受けた。明日からはそれぞれの配属に分かれ、実際に仕事をしながらの研修となる。
養父は俺の父方の祖父の兄だ。自分の子や孫にαがいないから、養父は弟の孫の俺を養子にした。西嶋の血を継ぐαの子どもを得るために。
養父は経営が傾いていた母の再婚相手の会社に資金提供し、母の再婚相手の会社は倒産を免れた。大きな恩があるから、俺は養父の意向には逆らえない。これから、種馬としての任務を全うする。
何事にも優秀なα、数が多く平凡なβ、そして男女とも発情期があり妊娠可能なΩ。男女の性別だけでなく、第2の性がある。Ωは3か月に一度発情期があり、αを誘うフェロモンを出す。αがΩのうなじを噛むことで番になる。
今は発情抑制剤でΩは発情を抑えられるが、Ωへの偏見はなくなっていない。
西光不動産でもαは管理職、βはαの手足となり働くという体制だ。Ωは政府の方針で雇用する義務があるから、50人ほど雇っているそうだ。
30番目のΩは26歳の男性で、向井陽夏(むかい ひなつ)というそうだ。明日から早速彼のいる営業所で研修を受ける。
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