終わらない絞殺

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「玲奈! おつまみ、まだか?」  キッチンから玲奈の返事が聞こえる。 「シティホテルを出たあと、俺は勢いのまま、その女と別れたんだ。笑えるだろ?」 「いやいや、笑えないねぇ。そもそも、玲奈ちゃんがこうして今、キッチンに立ってるのが信じられないよ」  今日は同僚の長谷川を自宅に招いた。二人のプロジェクトが成功に終わり、祝杯をあげたくなったからだ。 「驚くのはまだ早いぜ。その後、俺は玲奈を五回も殺すことになる」 「五回?! 嘘だろ?」  話が進むにつれて、同僚のリアクションも大きくなる。酒が回ってきたせいもあるだろう。 「冗談なんかじゃないんだよ。それから数日後、俺のマンションのインターホンが鳴って、出てみるとそこに玲奈が立ってたんだ。死ぬほど怖くなっちゃってさぁ。そのまま部屋に連れ込んで、人生で二度目の殺人。殺さなきゃ殺されると思ったからね……。それからあと四回、玲奈は俺の前に姿を現しては、その度に俺に殺されることになる」  俺はマフラーで首を締める素振りをした。あまりにも信憑性のない話に、真実を語る俺ですら少し笑えてきた。 「玲奈ちゃんは、不死身なのかよ」 「それか、お化けかどっちかだな」  玲奈がトレイにおつまみを乗っけて運んできた。俺と同僚は玲奈の足元を見て、大袈裟に笑う。 「ちゃんと足はありますッ!」  同僚はふくれっ面した玲奈の機嫌を取るように、「冗談冗談」と言いながら頭を下げた。 「そうやって何度も玲奈を殺すうちにさぁ──まぁ、殺すうちにって言うのも変な話だけど──やっぱり自分には玲奈しかいないって思うようになったんだよね」 「なるほどねぇ──なんて言えるわけないだろ。リアリティがなさすぎて、とてもじゃないけど信じられないな。お互い今日は飲み過ぎた。怪談話でもファンタジーでも何でもアリだ」 「飲み過ぎたなんて、らしくないな。過去の武勇伝が泣くぞ? とことん飲もうぜ、今日は!」
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