650年前

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650年前

 まだ身体が身体の形を成していなかった頃。  魂が海を泳ぎ、次の生を待っていた頃。  大きな手に掬い上げられた。  ふぅと甘い息を吹きかけられて、目を覚ました。  澄んだ水色の双眸がこちらを見つめていた。  わたしを抱く手のひらが暖かかった。向けられた笑みが暖かかった。  柔らかな唇が、わたしの額にキスをした。  額は燃えるように熱くなり、その熱はわたしに溶け込んでいった。
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