流行りのマフラー

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流行りのマフラー

ある人里外れた森の中に、一つの小さな村がある。 そこでは、空前の[マフラーブーム] が起きていた。 『寒さもしのげ、こりゃ便利だ!』 村の人間達は、年齢性別問わず、皆がマフラーを巻いていた。 さて、そんな中ある一人の男がその村を訪ねる。 男はとある詐欺組織の一員であったのだが、その中でひと悶着を起こしメンバーの一人を殺害。 都会を離れ、各地を逃げ回った後この村を見つけたのだ。 『私はこの村の村長。貴方を歓迎する。さあ皆!客人が来たぞ!今夜はご馳走じゃ!』 村の人々は彼を手厚く出迎えた。 これまで欺瞞と暴力の中で生きてきた男にとって、それは新鮮で嬉しいものだった。 男はそんな優しき村人達を、感謝の念を持ち眺める。 「……ん?」 その様に村人達を眺めていると、ふとある事に気づく。 男は村長に質問してみることにした。 「なんで皆、似たようなマフラーをしているのですか?] 男が疑問に思ったのはマフラーの色と模様。 村の人間は皆、揃いも揃って[赤色]で[斑点模様]のマフラーをしていたのだ。 「気になるかい?ならこのマフラーを一度巻いてみるが良い。理由が分かるぞ。」 村長は言った。 男は、マフラーを巻いてみることにした。 その瞬間! 周りにいた人間達が一斉に、男が巻いたマフラーを引っ張る。 男は手足をバタバタさせ抵抗したが、直ぐに動かなくなった。 「さて、村の皆を呼んでこい。ご馳走にしよう」 村長は言った。 「それにしても、マフラーは何て便利なんだろう。寒さもしのげ、狩の武器にもなる。その他にも沢山の使い道がある!」 村長は男にかじりつき、肉をひきちぎり頬張る。 「ああそうだ。質問に答えていなかったな。何故皆同じようなマフラーをしてるか?ほらこの通り!」 そう言って、口に付いた血をマフラーで拭った。
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