マフラーに関する他愛もない話

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 「うん……ストール……んっ?」  2人の間に、少しばかり微妙な空気が流れているようだった。でも、お互いの温かい表情は相変わらずだった。  無言の状況を突破したのは、女性の方だった。  「いやいや、マフラーだしマフラー」  「えっ? マフラーなのこれ?」  「いやマフラーでしょ! どうみても!」  「これストールだろ~」  「マフラーだっつうの!!」  マフラーだって!――ストールだろ~?――喧嘩しているようでも険悪な様子でもないが、この押し問答は数分間続いた。  もうこうなったら、どっちでも良いだろうよ――どうでもいい2人のマフラーストール論争を眺めておきながら、僕は弁当の箱を持ちながらそう思ってしまった。  「マフラーにしてはこれ薄くない?」  「こんなもんだよ~マフラーって~」  まだ続いた。
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