小説を書こうと思ったきっかけと闇の発露

2/2
前へ
/92ページ
次へ
 それからしばらく経ったある日、いつものように帰宅していたが、いつもなら話し出す彼女がずっと黙っている。見れば、手を握り締めている。  理由は分からなかったが、そんな彼女を見てられなかったので、人気(ひとけ)のない通学路に入るや、右手首をつかませた。  彼女はきっと、私が手首をつかませたことを分かっていなかったのかもしれない。そうでなければ、こちらが痛くなるほど、つかみはしないだろう。手首はしばらく痕が残った。  その後、彼女の家に到着し、部屋に入ると、彼女と物理的な距離を取るため、部屋の隅にいた。彼女は窓際のベッドに座り、「どうして傍にきてくれないの」と言った。  この直後、なにがあったのかは分からない。ただ、結果のみが目の前にあらわれた。  私は床に身体を押しつけられて、首を絞められていた。  小説でも読んでいると思うかもしれないが、これは事実だ。私が体験したことだ。  私はパニックに陥った。すぐに荷物を(まと)めて、その場を逃げ出した。  私は知り合いに会う約束を取り付け、首を絞められたことを打ち明けて、泣いた。死にはしなかったが、私の心は殺されたも同然だった。私の中に、人を信じてはいけないという闇が生まれた。同時に、人に信じられたいと渇望してもいた。  それから私は彼女との関係を見直し、数か月後、別れを告げることにした。こんなことをしたのに(ゆる)していたら、私がもたないと、分かったからだ。  別れを告げると、彼女はなぜか、私の頭を撫でてきた。  今でも意味が分からない。  その後、彼女はなにごとかを叫んで、その場を後にした。  当時、頭痛持ちだった私は、その後、痛みに苦しんだ。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加