二度目の別れと自身のこと

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 それでも、過去を責めるもう一人の声をずっと聞かなければいけないのは、辛かった。死にかけたことや、別れを告げた人達のことを、ずっと責め続けているもう一人の自分に。黙れと言いたいが、それもできないまま、今に至る。  別れを選択しなければ、前に進めなかったのかもしれない。  それが最善だったのかもしれない。  今まで生きてきて、辛いこともたくさんあった。乗り越えてきたのではない。自分の心に蓋をして、押し殺して、やり過ごしてきた。そんなやり方をすれば、いつかは破綻する。けれど、このやり方しか、思いつかなかったのだ。  私はいつしか、自分の心を労わることを止めていた。  きっと、死にかけたことがきっかけだ。  心の傷など癒せないと分かったからかもしれない。  私はもう、闇に片足を突っ込んでいる。  それが増したからといって、それがなんだというのだ。  人に裏切られる気持ちも、人を裏切る気持ちも分かっている。  それでも歩けというのなら、歩いてみせようじゃないか。  どれほど辛い闇の中でも、心がどれほど傷ついても構わない。  心はもう、死んでいる。  だから、傷が増えたところで、痛みが増えたところで、なんとも思わない。  と言いたいが、そう思いたいが、そうはいかない。  そう。なにも感じなくなることは、私の理想であって、実際にできているかと聞かれると否と答えるだろう。  辛さも苦しみも、ずっと感じていることなのだから。  楽になりたいと思わないこともないが、それは諦めている。  なぜか?  願いなど、無残に打ち砕かれるということを知っているからだ。  どんなささやかな願いであれ、叶わないと分かっているからだ。  楽になれるように、自分で変われるようには思えないからだ。  私は徐々に、いや、急速に闇に染まった。  たった二つの出来事で、坂から転がり落ちるように、闇の中へと沈んでいった。  辛い、哀しい、寂しい、苦しい、憎い。  そういった闇が渦巻く中をずっと歩いている。  冷静さを保つように心がけて、歩いていくしかないのだ。
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