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見方
「「「おはようございます」」」
予定時刻に打ち合わせが始まった。
コーヒーの準備をしていて、遅れて入る美樹。
前のテーブル、真ん中に榊原が座る。
ちょうど反対側に美樹。
書類にペンを走らせながら、そっと榊原を見る。
➖あの腕に抱かれて、あの唇でキスしてそして・・・➖
あの夜のことを思い出しながら、榊原を見てしまう。
誰にも内緒の甘い甘い夜の出来事だった、と美樹は思っている。
榊原にしてみれば、不特定多数の中の1人の女にすぎないのだろうが、美樹にとっては初めてのことばかりだった。
➖願わくば、もう一度➖
あの2人きりの時間をもう一度手に入れたい。
淡々と進む打ち合わせの中、榊原を見つめる美樹。
デートの前までと、今では榊原の見方が変わった。
仕事ができる、厳しい男の面は同じだが、恋人つなぎをしてエレベーターの中でキスをしてくる榊原は、少なくともここでは美樹しか知らない。
そう思うと、優越感のようなものがこみ上げてきた。
「そういうわけで、このプロジェクトを一気に進めていきたいと思います。それには皆さんの協力が不可欠です。是非とも、お願いします」
榊原の弁に熱がこもる。
「「わかりました」」
「それではまた次回!それまでには予定表通りにすすんでいることを期待します」
榊原は帰っていった。
席に戻ると、榊原にLINEする。
『予定表通りに進んでいたら、頭ナデナデのご褒美ありますか?』
ぴこん♬
『予定表通りではすこし遅いです』
『それよりも早く進めることができたら、ご褒美ください!』
➖よし、やってみるかな?➖
頑張れば早く進められるというまい算段がある。
ぴこん♬
『どんなご褒美をご所望ですか?』
『ナデナデ以外でも?』
ダメ元で言ってみる。
ぴこん♬
『たとえば?』
『もう一度、ワインが飲みたいです。今度は私がご馳走しますので』
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