誤解

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誤解

『明日は榊原さん、来社ですね!うれしいです』 榊原にLINEを送る。 3度目の榊原の来社。 前回の進捗の遅れを取り戻すべく、美樹はやれるだけのことをやったつもりだ。 残業しても間に合わない時は、持ち帰ってこなした。 ぴこん♬ 『明日は予定通りに伺います。宜しくお願いします』 『お待ちしてます』 ➖明日はきっと大丈夫、私にできることはやった➖ 次の日。 午後からの打ち合わせに備えて早めに会議室の準備をする美樹。 書類を並べるのは、林も手伝った。 「美樹さん、いつの間にこんなに書類作成してたんですか?」 林も感心していた。 「ちょっと気合い入れて頑張ってみたの。みんなにばかりハッパかけて、自分がやらないと誰も相手にしてくれないだろうし」 【榊原に認められたいため】 との理由は隠しておく。 「そうなんですね、いやぁ、みんなも美樹さんのいうことには従うから不思議だったんだけど、これだけやってたら俺も!って気になりますね」 「うん、みんながやってくれて進捗状況がだいぶよくなって助かった!今日は怒られないでしょ!」 「ですね!」 美樹さんのおかげで助かりましたと言う榊原のことを想像しながら、準備をすすめた。 書類を机に並べていたその時 「あ、落としちゃった」 かがんだ拍子にボールペンを落としてしまった美樹。 慌てて拾おうとして、ブラウスの襟元がどこかにひっかかり、何かが落ちた。 小さな金属音。 「きゃっ!ネックレスが!!」 ペンダントトップが床に落ちた。 するりとチェーンも落ちた。 「大丈夫ですか?」 林が近づいてきた。 「うん、なんかね、チェーンがうまく留められてなかったみたい」 チェーンが切れたわけではない。 榊原が来る時には、お気に入りのスワロフスキーのペンダントを付けている美樹。 勝負服ならぬ勝負アクセサリーというところか。 「ごめん、ちょっと後ろ付けてくれないかな?」 林に背を向け、ネックレスの留め具を後ろにまわした。 「いいですよ、じっとしててください」 髪が邪魔にならないように少しうつむく。 「小さいから、難しいな」 トントントン! ガチャ。 誰かが入ってきた。 「「あっ!」」 美樹と林、同時に振り向いた。 入り口に立っていたのは、榊原だった。 バタン! ドアが閉められた。 ドサッ!!ガチャン!! 何かが落ちた音がした。 ドアの外が騒がしい。 「え?もしかして??」 美樹と林が目を合わせた。 「何か誤解されたんじゃ?」 ドアの位置から2人を見たら?と想像した美樹。 美樹を後ろから抱きしめている林、に見えたのかもしれない。 「「ちっ違います!」」 慌てる2人。 急いでドアを開けた美樹。 床に落としたペンやノートや細々としたものを拾い集めているグループメンバーがいた。 榊原がバッグを落とし、中身が散らばったようだった。 「何をしてたんだ?」 社長が言う。 「白井さんのネックレスが落ちて、それを付けていただけです!」 「そうです、ネックレスが・・・」 社長の後ろにいる榊原を見た。 美樹と全然違う方向を見ている。 ➖ダメだ、誤解された、きっと➖ それでも。 「ネックレスの金具を留めてもらってただけです。角度がおかしければそんな風に見えて誤解されても仕方ありませんが」 きっぱりと言うしかない。 それに。 遠くから美樹を睨む視線を感じていた。 林と噂がある女性だとわかった。 ➖誤解だってば!もうっ!➖ タイミングが悪いと、あっちもこっちも誤解を招く。 でもせめて榊原の誤解はときたい。 「わかりました。美樹さんが言うならそういうことでしょう。開始時間になったので打ち合わせを始めましょう」 そう言ったのは榊原だった。 ➖誤解は解けた?➖ グループメンバーは、中に入った。
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