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東京にて
♪🎶♬♪♬・・・
久しぶりに会った友達とのランチ、そのテーブルの上に置かれた美樹のスマホが着信を告げた。
【非通知】
開いた画面には、番号や名前ではなく、誰だか教えてくれない人からの着信を知らせる文字が表示された。
3回コールして、フッと消える画面。
「え?気にしないで出ていいよ」
美樹が自分に遠慮して電話を切ったと勘違いした友達が、ね!とにこりと笑う。
「あー、ううん、いい、勝手に切れたから」
着信履歴を確認しながら、答える美樹。
やはり、【非通知】。
チッと舌打ちしそうになり、とっさに唇を噛んでごまかした。
「どうしたの?嫌なヤツからだったとか?」
美樹の一瞬ゆがんだ口元を、長年の付き合いである親友の由里子は見逃さなかった。
「ん・・・、非通知ってやつ」
非通知、だけで由里子が記憶してるかどうかは不明だったが、そう答えてみた。
「え?非通知?!、もしかして・・・の非通知ってこと?!」
由里子の目が大きくなって、面白いものを見つけた
猫のように見えた。
「やっぱ、由里子はすごい、おぼえてたんだ。」
「そりゃあ、アイツは強烈だったから忘れないって!ていうか、なんで今頃連絡があるわけ?あれ?終わったんじゃなかったの?」
食後のコーヒーを、くるくるかき混ぜながら興味深げに顔を寄せてくる。
「終わった・・・と、私も思ってたんだけど。
半年くらい前かな?不意に連絡があって。メールでたまに挨拶程度のやり取りしてる。
メールって、あのサイトのやつね」
「へぇーっ、復活愛?」
「愛、とか言わない!もうそんな感じではないし。どちらかと言えば同期の桜?学友?みたいな。
ただ同じ時間を過ごして、共有できる思い出があるというだけの、
うーーん、友達、そう異性の友達かな」
➖アイツ・・・か・・・➖
薄れつつあった、アイツ、の映像、情報を思い浮かべてみる。
2才年下、京都在住。
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