LINEは続いて

1/1
前へ
/131ページ
次へ

LINEは続いて

改札で田崎と別れる。 「またね」 「またな」 今度はいきなりキス、なんてことはなかった。 振り返ることもない。 出会ったばかりの頃はホームまで送ってもらったり、田崎から会いに来てくれたり、新幹線が走り出してすぐにメールしたりした。 今はもう、そんな必要はなくなった。 そういうことをしなくても、気持ちがざわつくことはない。 ➖腐れ縁か、そうかも?➖ そういう田崎との関係が、心地いい。 会えば必ずホテルへ、そんな時もあった。 思い出してクスッと笑う。 ➖私も貴俊も、年をとったのかなぁ?➖ 新幹線は名古屋へ向かっている。 ぴこん♬ LINEが届く。 スマホを開く。 『今日の朝ごはんです』 コメントとともに、機内食らしい写真。 『今日はどちらまで?行かれるのですか?』 『アメリカです。美樹さんは仕事ですか?』 『いえ、今日は休みで出かけてました。これから帰るところです』 『そうですか、じゃお気をつけて』 『はい、榊原さんも、お気をつけて行ってきてください』 LINEを始めた頃より、会話としてなりたつようなやり取りになっていた。 美樹も少しずつ、自分の話をLINEで榊原に伝えていた。 『いま、こんな仕事をしてて忙しいです』 『これは難しいです』 そんなLINEをすると 『時間は作るものです』 『やりもしないで難しいと決めつけるのは浅はかです』 そんな返事が返ってくる。 なぜだか甘やかしてはくれない、そんな感じの文面だがそれは美樹にとっては面白かった。 『もう少しレベルをあげましょう』 『これは宿題です、完全に正解するまで許しません』 なんだかスパルタ塾講師みたいなときもある。 完全に正解するまで、まる2日かかったが 解けたときはうれしかった。 榊原からのLINEが届くと、美樹はそちらに集中してしまう。 また田崎のことは忘れている。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

372人が本棚に入れています
本棚に追加