372人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、彼女は白井さん、このグループの裏方というか細かな雑務をやってもらいます」
社長が私を紹介した。
「白井です、雑用ならなんでも申し付けてください」
頭を下げる。
「じゃあ、会議の記録を残してくれる?」
社長からの指示。
「パソコンにいきなりはできないので、メモをとってからでいいですか?」
「あとでまとめてくだされば、問題ありません」
社長の代わりに榊原が答える。
「は、はいっ」
まさかの榊原からの返事にうろたえる美樹。
➖しまったぁ、もっとパソコン、やっとくんだった➖
自分の勉強不足を後悔した。
ここでちゃんとメモをとって、しっかりした資料をつくらなければ!と気合をいれる。
会議が始まった。
専門的な言葉、機械の仕組み、材料の手配など美樹にはわからない言葉が多かった。
それでも言葉の意味を質問している場合ではないので、メモに残しておきあとで会議のメンバーに質問することにした。
それにしても。
榊原は、よどみなく会議を進めていく。
社長の説明が足りないところをわかりやすく、でも厳しい語調で補足する。
➖へぇ、こんな話し方なんだ、気持ちいい話し方だな➖
最初に会った時のように、言葉選びがうまいし、標準語らしいアクセントは丁寧な話し方にとても合っている。
メモを取りながらも、榊原の言葉を聞き漏らすまいと耳を傾ける美樹だった。
しばらくの間榊原の説明があり、一通りこのグループのやるべき仕事の説明が終わったらしい。
「じゃあとは、うちの加藤から説明します」
榊原はそういうと、隣に座っていた加藤にバトンを渡した。
「どうも、加藤といいます。これからは私が主に指示をしていきます。榊原はマネージャーとして総合管理になりますので、直接の指示は私がしていくので、よろしくお願いします。
さて、まず、この最初の案件からですが・・・」
榊原から加藤にかわって、美樹のモチベーションが一気に下がった。
➖なんだ、榊原さんがずっと直接指示してくれるわけじゃないんだ➖
それでも、ちゃんと会議の議事録を作りたいと思った、榊原に見てもらうために。
そのまま会議は2時間ほど続いた。
終わるとき、榊原が言った。
「これからは加藤が直接指示していきますので、何か相談事があれば加藤に聞いてください」
最初のコメントを投稿しよう!