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2日後、議事録をまとめて社長に確認してもらい、その後エクセルデータで榊原に送った。
[榊原さま
お世話になっております。
議事録をまとめたのでお送りします。
お手隙の際にご確認ください。
白井美樹]
どうもビジネスメールは性に合わないというか、難しい。
もっと詳しく会社名だとか連絡先だとか添え書きするべきなのだろうが、美樹にはそれがめんどうで仕方なかった。
だからいつも必要なことだけのメールになってしまう。
送信してしばらくして気づいた。
「あーーーーっ!!!大変なことしちゃった!」
大騒ぎする美樹に、林が声をかける。
「どうしたんですか?白井さんっ!何かあったんですか?」
「この議事録、同じやつを5通送ってるっ!!それも画像付きばかりだから、けっこう重たいメールになってる!どうりで送信に時間がかかったんだ!」
どれどれとマウスで美樹のパソコンを操作する林。
「まぁ、しゃあないっすね、送っちゃったもんは。
あちらは大企業だから、少々重たいメールでも屁でもないでしょ!」
➖たしかにそうだけど、榊原さん宛にメールするのにミスするなんてっ!➖
頭を抱える美樹の背中を、ぽんぽんと優しくたたく林。
「大丈夫だって、変なメールってわけじゃないし」
「うん・・・」
思い立って謝罪メールを送った。
『間違えて同じデータを5通も重複して送ってしまいました。申し訳ありません』
返事はなかった。
➖呆れられたのかな➖
もう少しちゃんとパソコンを勉強しとけばよかったと、また後悔した。
今度、林くんにおしえてもらおうと思った。
終業時間になっても榊原からのメールはなかった。
LINEもなかった。
トボトボと、音がしそうなほどのトボトボな歩き方で帰路につく。
ぴぴっ!と車のキーを開ける。
買ったばかりの新車の匂いは、まだ残っている。
➖ま、いっか!考えても仕方ないし➖
気分を変えて、音楽をかける。
走り出そうとしたその時に
ぴこん♬
LINEを受信した。
もう一度パーキングに入れて、急いでスマホを開く。
『今日の朝ご飯です。あと1時間で目的地に到着です』
コメントとともに送られてきた写真には、大きなオムレツとフライドポテト、フルーツとコーヒーが写されていた。
榊原からのLINEに一気に有頂天になる美樹。
『大きなオムレツですね!』
ぴこん♬
『ビュッフェだったのですが、ちょっととりすぎました』
ふふっと笑いが出てしまう。
榊原は時々、ご飯の量を間違えるようだった。
『今回はアメリカですか?』
ぴこん♬
『そうです、時差はマイナス14時間というところでしょうか?』
まるで昼夜逆転だ。
美樹は思ったことを聞いてみた。
『時差ボケや気温差とかで体調を崩したりしないのですか?』
榊原は月に1週間も日本にいないらしい。
ぴこん♬
『それくらいで体調を崩していたら、サラリーマンは務まってもビジネスマンは務まりません』
➖ええと、サラリーマン?ビジネスマン?の違いって、ええと➖
とりあえず調べなきゃ!と検索する。
榊原とのやり取りでわからないことがあると、すぐに調べる癖がついた。
『ネットがすべて正しいとは限りませんから、そこはきちんと考えて判断してください』
とか言われたことがあるけど、じゃあどうしろと?とは言っていない。
榊原はビジネスマンだということはわかった。
『責任がちがいますもんね』
とわかったように返事をする。
➖そういえば、メールの件は?➖
と思ったが、アメリカに向かう途中ならば、まだパソコンを見ていないかもしれない。
ぴこん♬
『昔は体調を崩すこともたまにありましたが、今はきちんと体調管理がなされてますので』
➖奥様のことかな➖
初めて奥さんの存在を感じた。
和服の似合う上品な女性を想像した。
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