近づく

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『明日は来社されますよね?』 ぴこん♬ 『予定通り、13:00に伺います』 ➖やった!榊原さんに会える!➖ 『お待ちしております、お気をつけて』 会社で会うと、というかLINEでのやり取り以外は他人行儀、【他人】でしかない。 そういうふうにしましょうと、言われたわけでもない。 でも、【他人】 今思うと、それがよかったのかもしれない。 みんなが知ってる榊原さんと、私が知ってる榊原さんは違う!と思えることで、よけいにワクワクする。 ➖私だけ、というのが大事なのかも?➖ ワクワクしながら、会議室とコーヒーの準備をする。 時間になった。 グループメンバーが会議室に入る。 榊原と加藤が入る。 「それでは時間になりましたので、打ち合わせを始めたいと思います」 加藤が司会で、会議は始まった。 みんなに配られた日程表を、榊原も確認する。 この日のために、林に教えてもらいながら見やすくなるように美樹が作成した日程表。 その後、加藤が作成した進捗表が配られた。 二枚を見比べていた榊原の表情が硬くなった。 「これは、どういうことですか?」 隣に座っている加藤に質問している。 「えっと、あの、ですね、なかなかうまくいかないところがありまして・・・」 焦りながら何かを説明しようとしていたが、 「詳しくはこちらの社長から、説明してもらいましょう」 と言って加藤は社長を見た。 「えーと、あのですね、この2の部分は、ですね・・・」 ➖ヤバい!日程表からだいぶ遅れてるから榊原さん、怒ってる!➖ 説明しようとしている社長を、じっと見ている。 「あの、材料がですね、業者さんから・・・」 パチン! 手にしていたボールペンを机に叩きつけた榊原。 「そういう報告は聞いてませんが?業者にはいつ、発注したのですか?」 社長につめよる榊原。 「えーと、いつだったかな?白井さん、確認してくれる?」 と社長からいきなり話を振られて焦る美樹。 「あ、はい、ちょっとお待ちください、すぐ調べます!」 とパソコンで検索する。 本当は検索なんかしなくても記憶している。 社長から言われて発注したのは、昨日のことだ。 「さすがに発注しとかないとヤバイかな?どっちにしてもまだその先が見えてないから同じだけど」 その先とは、その後を受ける業者の選定もできていないのだ。 美樹から見ても、進捗状況はとても悪い。 でもそれは言えない。 ➖どうしよう?➖ 自分のせいではないと思いながら、昨日ですと言えない雰囲気。 『昨日とは言うなよ、業者のせいにしろよ』 そんな社長の声が聞こえる気がする。 ➖でも嘘をつくのは・・・➖ 「わかりましたか?美樹さん」 榊原の声がした。 誰かがいる時に『美樹さん』と呼ばれたのは、その時が初めてだったのに 美樹はそのことに気づく余裕もなかった。
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