誤解

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少し遅れて加藤が入ってきた。 「すみません、遅れました」 軽く頭を下げて、榊原の隣に座る。 「では、前回からの進捗状況を確認したいと思います・・・」 林と美樹の2人で並べておいた書類に目を通す榊原。 上手くできているのか? 榊原が思うほど進捗状況はいいのか? 美樹は榊原の表情からそれらを読み取ろうとしたが、特に表情が変わることもなく判断できなかった。 少なくとも前回のようにボールペンを机に叩きつけたりはしないようだが。 打ち合わせを半分ほど終えたところで、一度休憩ということになった。 「美樹さん、コーヒーをお願い!」 社長から頼まれた。 「はい、淹れてきます」 コーヒーメーカーのある休憩室へと向かう。 ドアから出たところで、後ろから誰かがついて出てきた。 パタンとドアを閉め 「美樹さん?」 美樹に声をかける榊原。 声の主が榊原だとわかるとドキリとした。 「はい!」 「これをコピーしていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」 「わかりました、各一部ずつで・・・!?」 書類を見ながら部数を確認しようとしたとき、 「よく頑張っていますね」 そう言いながら、榊原は美樹の頭を優しくナデナデした。 「えっ?!」 突然のことに、ちょっとおかしな声を出した美樹。 顔が赤くなるのが自分でもわかった。 「じゃ、お願いしますね」 そう言うと会議室の中へと戻って行った。 ➖えええええええーーーーーーっ!!➖ 思わず大声を出しそうになって自分の口を両手で押さえた。 ➖今のは何?何?褒められた?え?何?➖ 今になって足が震えていた。 頭を優しく撫でられた、ただそれだけのことなのに。 うれしい!!と飛び上がりたい気分になった。 「コーヒーだった・・・」 社長からの用事を思い出した。 ➖誰かに見られた?➖ くるりと周りを見渡した。 その心配はなかった。 榊原は、通路からは死角になるところで美樹の頭を撫でたようだ。 コーヒーを淹れながら、鼻歌が出てしまう美樹だった。
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