はずす

1/3
364人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ

はずす

机の上に、ちょこんと座るBrownny。 正式にはBrownらしい。 それを榊原と美樹はBrownnyと呼ぶ。 ただそれだけのことなのに、美樹には榊原との秘密ができたみたいでうれしかった。 まるで2人でしか通じない暗号のような。 卓上のカレンダーを見る。 次に榊原が来社するまで30日、その前に加藤が2回進捗状況を確認しにくる予定になっている。 ➖早くきて欲しいような?でもBrownnyをずっと預かっていたいような?うーーん➖ 今の美樹の些細な悩みだ。 2週間後、加藤がやってきた。 「榊原さんには一応報告したけど、これでやってみましょう」 なにやら特殊な装置を持ってきた。 「どれどれ?ははーん、こういうことか」 社長は納得したようだ、が、美樹にはわからなかった。 「社長、それってどんなふうに動いてどんな役目をするやつ?」 「この先端が回転しながら一つ一つ部品を並べてくやつ。まぁ、この装置の仕組みを榊原さんに説明してもわかるかどうか?だから実機で実験やって見せるわ」 ➖よくわからないけど、榊原さんも承知ならいいのか➖ とその装置が動くのを見ていた。 ➖でも・・・なんとなく・・・➖ この前の打ち合わせで、榊原が言っていたことと違う方向の動きのような気がした。 それに、その段階はまだあとで考えるとして、その前にやるべきことがあると言っていた。 「社長、それ、榊原さんが言ってたことと違う気がするんだけど?」 すると代わりに加藤が答えた。 「これでいいんですよ、榊原の言う通りにしていてはちっとも先に進まないんで」 少しイラついた言い方だった。 「そうなんですか、じゃあいいです」 榊原の直属の部下である加藤が言うのだから、間違いはないのだろう。 「直接の指示は加藤が出します」 と最初に榊原も言っていたのだから。 何度かの動作確認ののち、加藤は写真を撮り実験結果をまとめていた。 「これで、結果報告してみるけど、まぁ、多分却下だと思います。なかなか頑固なところがあるので、あの人は」 「まぁ、次の方法も考えてみますわ」 と社長。 「この後、どうですか?一杯!」 誘うのは社長。 「明日早いんだけどなあ、まぁ誘われたら断れないかなぁ?」 なんだかんだでそっちの方が目的で来てるような気がした。 これで進捗は大丈夫なのだろうか。 「美樹さんも行く?」 「いえ、私は今日は用事があるので」 ホントは用事なんかない。 この飲み会に参加すると、榊原のことを悪く言う集まりに参加することになりそうで それはごめんだからだ。 「せっかく呑めるのに」 「また、今度お願いします」 美樹は自分の机に戻った。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!