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はずす
机の上に、ちょこんと座るBrownny。
正式にはBrownらしい。
それを榊原と美樹はBrownnyと呼ぶ。
ただそれだけのことなのに、美樹には榊原との秘密ができたみたいでうれしかった。
まるで2人でしか通じない暗号のような。
卓上のカレンダーを見る。
次に榊原が来社するまで30日、その前に加藤が2回進捗状況を確認しにくる予定になっている。
➖早くきて欲しいような?でもBrownnyをずっと預かっていたいような?うーーん➖
今の美樹の些細な悩みだ。
2週間後、加藤がやってきた。
「榊原さんには一応報告したけど、これでやってみましょう」
なにやら特殊な装置を持ってきた。
「どれどれ?ははーん、こういうことか」
社長は納得したようだ、が、美樹にはわからなかった。
「社長、それってどんなふうに動いてどんな役目をするやつ?」
「この先端が回転しながら一つ一つ部品を並べてくやつ。まぁ、この装置の仕組みを榊原さんに説明してもわかるかどうか?だから実機で実験やって見せるわ」
➖よくわからないけど、榊原さんも承知ならいいのか➖
とその装置が動くのを見ていた。
➖でも・・・なんとなく・・・➖
この前の打ち合わせで、榊原が言っていたことと違う方向の動きのような気がした。
それに、その段階はまだあとで考えるとして、その前にやるべきことがあると言っていた。
「社長、それ、榊原さんが言ってたことと違う気がするんだけど?」
すると代わりに加藤が答えた。
「これでいいんですよ、榊原の言う通りにしていてはちっとも先に進まないんで」
少しイラついた言い方だった。
「そうなんですか、じゃあいいです」
榊原の直属の部下である加藤が言うのだから、間違いはないのだろう。
「直接の指示は加藤が出します」
と最初に榊原も言っていたのだから。
何度かの動作確認ののち、加藤は写真を撮り実験結果をまとめていた。
「これで、結果報告してみるけど、まぁ、多分却下だと思います。なかなか頑固なところがあるので、あの人は」
「まぁ、次の方法も考えてみますわ」
と社長。
「この後、どうですか?一杯!」
誘うのは社長。
「明日早いんだけどなあ、まぁ誘われたら断れないかなぁ?」
なんだかんだでそっちの方が目的で来てるような気がした。
これで進捗は大丈夫なのだろうか。
「美樹さんも行く?」
「いえ、私は今日は用事があるので」
ホントは用事なんかない。
この飲み会に参加すると、榊原のことを悪く言う集まりに参加することになりそうで
それはごめんだからだ。
「せっかく呑めるのに」
「また、今度お願いします」
美樹は自分の机に戻った。
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