伝えたい

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榊原からのLINEは止まってしまった。 悲しくて悔しくて後悔ばかりだった。 仕事のやる気も出ない、おしゃれをする気にもならない、食欲も出ない・・・ ➖完璧に、失恋したみたいだ➖ 自分でもおかしかった。 好きも嫌いもなにもないのに、ふられたともちがうのに、こんなに落ち込んでしまう。 ならないスマホを開いては、ため息。 ➖なんで?なんで?➖ 自分が送ったLINEと、榊原からの激怒LINE。 何回も読みかえしてみた。 「ん?」 ➖あれ?榊原さんの言ってることって、当然のことじゃない?➖ ➖私はここで一番仕事ができない、それはわかってる、入ってまだそんなに時間もたたないし、特技があるわけでもない。➖ ➖私に責任なんかとれるわけがない、うん➖ ➖そんな私が窓口に?思い上がりだわ➖ わかっていることをあらためて言われただけだ。 ということは、もっと頑張って自分のレベルを上げていけばいいんじゃないか?と単純に思った。 美樹ははずされたわけでもなく、クビになったわけでもない。 思い上がったLINEを、厳しく叱責された、ただそれだけだと気づいた。 ➖なんだ、じゃ、もっと張り切って、レベル上げて美樹さんのおかげで助かりましたと言ってもらおう➖ こういう切り替えは、美樹の特技かもしれない。 最低レベルと言われたことも、納得してしまった。 数日ぶりにLINEを送った。 『榊原さんのLINEを読み返したら、わかりました。当然のことを改めて言われただけでした。 だから、もっと頑張ってレベルを上げて榊原さんに認めてもらおうと思いました。 今の私は、めっちゃやる気になってます』 そのまま画面を見ていた。 「やった!」 既読がついた。 返事はなかった、が、とりあえず読んではもらえた。 それだけでよかった。 自分の言いたいことを、榊原が読んでくれた、それだけでよかった。 「よしよし」 ➖あれ?私、こんな性格だった?➖ もっと昔、こんなふうに言われたらきっと、 『こっちからお断り!ふんっ!』 そんなふうに即離れていただろう。 最低レベルなんて言われたら、小さいながらもしっかりあるプライドがポキン!と折れていただろう。 それが、今は違う。 榊原が相手だから。 ぼんやりと、榊原のLINEから感じることがあった【雰囲気】。 どこをどう説明したら自分以外の人にわかってもらえるかわからない、直感のようなもの。 榊原の言葉や行動はとても強気で、だから誤解を招くことが多いと美樹は思った。 それは榊原の一面であって、もっとナイーブで繊細な一面もある、と美樹は思っていた。 そういう榊原を理解しようとする人間が、榊原のそばにいるべきじゃないか?と勝手に思った。 「私の勝手な気持ち」 小さく呟いた。 離れないでいようと思った。
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