伝えたい

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それからは仕事の小さな確認事項だけをLINEするようになった。 大抵は既読スルー。 でもまぁ、ブロックされてないだけマシかと思いながら。 加藤がはずされたと打ち合わせで連絡してから、1週間後。 また加藤がやってきた。 今度は打ち合わせではなく、1人の来客として。 それでも事務室より、会議室がいいということで、会議室にコーヒーを運ぶ。 コンコンコン! 「どうぞ」 「あ、そうだ、白井さんにも聞いてもらおうかな?」 加藤が美樹に言う。 「え?なんですか?」 「榊原さんの話」 「私が聞いていいんですか?」 内心、興味津々だったが、それは隠しておいた。 「これ、見て」 まず見せられたのはこの前の榊原と加藤のメールのやり取り。 「え?どうしてここで加藤さんをはずすことになるんですか?」 わからなかった。 もしかすると、そのメールの前に何かやりとりがあるのではないか?そんな中途半端な感じだった。 それでも、一応加藤に話を合わせる。 「理由がわからないので理不尽な気がしますね」 「そういえば、美樹さんのパソコンにも榊原さんからメールが来てたでしょ?」 社長が言う。 「あ、あれですか?」 新機材の納入を白井さん宛に送りました、そんなメールだった。 ただし。 『他の人には、絶対開けさせないでください。次回そちらに伺う時まで、誰にも開封させないこと』 そんな内容も書かれていた。 「おかしなメールじゃないと思いますが」 「いやぁ、なんか加藤さんが行っても開けさせるな、みたいにもとれる」 「考えすぎでしょ?」 「他に何か榊原さんからメールがきて、内容がおかしかったら連絡してください」 「おかしかったら?」 「パワハラみたいな内容だったら、ということです」 「連絡したらどうするんですか?」 「証拠として集めて、社内のそういう部門、人事に訴えます。やたらにでかける出張も、経費を個人的に使ってる疑いもあるので、そちらも調べて訴えます」 「とうとうやりますか?」 社長は少しうれしそうだった。 「僕の前にも鬱になって退職した人もいるからね、仇はうたないと!」 なんだか雲行きがあやしい。 ➖榊原さんを訴える?そんなことができるの?➖ 「本当にパワハラしてるんですか?」 改めて聞いてみる。 「美樹さんにはあたりが柔らかいから、わからないよね?やっぱり女には優しいってことだろうけど。 あの人の部下のなかには、もう部署を変えてくれと人事に直訴してる人もいる、本当なんだよ」 ➖どうしよう?榊原さんが訴えられたら!➖ どうも加藤は本気のようだと感じた。
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