伝えたい

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「とりあえず、もっと証拠を集めます。そして失脚を狙って訴えますよ」 加藤の鼻息が荒い。 失脚・・・ ➖榊原さんに知らせないと!でも、なんて?➖ よその会社の人事に口出すことではない、とか言われるに決まってるし 今の状態だと何を言っても聞いてもらえないかもしれない。 それでも。 思いついた言葉をLINEした。 『お疲れ様です。一言だけ言わせてください』 『Be careful!』 英語も堪能な榊原なら、わかるだろうか? 『気をつけて!なんの?』と聞いてくるだろうか? 加藤のことを直接伝えるのは違うような気がした。 告げ口になってしまうし、もし、榊原が加藤を問い詰めたとして加藤がしらをきったら、美樹の勘違いでまた榊原を嫌な気分にさせてしまうだろう。 そもそも美樹には、榊原がわけもなくパワハラのようなことをする人には、どうしても思えなかった。 榊原の言葉選びは的確で、ハッキリしている。 忖度や空気を読むなどのまどろっこしいことはしない。 だから、反感をかうのかもしれない。 それに頭脳明晰で、誰も反論できない。 それが鼻につくのかもしれない。 『パワハラで訴えられますよ、資金の使い込みとかも言われますよ』 そう言えば手っ取り早い方法なのだろうが、それは言ってはいけない気がした。 伝えたいことがあるのに、うまく伝えられない、 大バカものの私があんなことを言わなければ、普段のLINEの流れで言えたかもしれないのに。 また後悔してもしきれない。 LINEは既読になった。 返事はなかった。
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