日常

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日常

榊原とのワインデートのあと、3週間ほどがたった。 LINEのやりとりは、どちらかというと減ってきたような気がする。 『好き』 そんなセリフもLINEには見当たらなくなった。 だからといって寂しさを感じることもなく、それまでと変わらない【日常】が過ぎていく。 一線を越えた、という事実はあるが、ただそれだけのこと。 ➖あと20年若かったら、もっと違ったんだろうなぁ➖ 好きで好きでたまらない!とか、ずっと一緒にいたい!とか、そんな暑苦しい感情は湧いてこない。 ➖歳のせい?➖ あの、職場まで乗り込んできた林の妻は、あんなに感情をむき出しにして私にくってかかってきた。 恥も外聞もなく。 あの後、そこそこの修羅場になったと噂で聞いたが、結局林は女と別れてもとのサヤにおさまったらしい。 巻き込まれた感がありありの美樹に対して、林はとくに悪びれる様子もなく 「昨日はどうも・・・」 それだけで済ませた。 どうして私の名前を口に出したのか聞こうと思っていた美樹だったが、巻き込まれても激昂はしないだろうと美樹の性格を読んでいたのかもしれない。 「まぁ、いいか・・・」 それでも、【日常】の中に榊原の仕事を進めるという目標は変わらずあって、美樹なりに仕事をこなしていた。 ぷぷっ! メールの受信。 『誕生日おめでとう!今年はちゃんとおぼえていました』 田崎からだった。 ➖あ、誕生日、忘れてた!➖ 去年も一昨年も、そんなこと忘れてたのに、今年はおぼえててくれた。 それだけのことなのに、ほっこりした。 『ありがとう。自分の誕生日、忘れてました』 ぷぷっ! 『それくらい毎日が充実してる!ってことか?』 ➖そうかも?➖ 『うん、そうかも』 榊原のことも仕事のことも、今の自分は満たされていると美樹は思った。
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