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ぴこん♬
『明日は予定通りに伺います』
➖久しぶりの来社だ!それもデート以来初!➖
『お待ちしております。お気をつけて』
エクセルの書類をまとめ、プリントアウトした。
「明日は久しぶりの榊原さんの来社だね」
社長が話しかけてきた。
「そうですね。社長もやるべきことをしっかりやっておいてくださいね!」
「お!なんかさ榊原さんと似たような口調になってるじゃないか」
「え?似てる?」
「そう!言い方とか、言葉づかいとか」
「キツめに言うと、誰だってこうなると思うけど?」
そう答えながら、少しドキッとした。
帰宅前。
『榊原さんと口調が似てると言われてしまいました』
ぴこん♬
『それは仕方ありませんね。でも懲りずにもっと話しましょう』
➖もっと話したいです、私も➖
榊原に対する興味はまだまだ尽きていないと思う。
それはたとえ関係を持ったとしても、プライベートな一面をほとんど見せないからだ。
知りたいような気もするが、知ってしまうと面白くなくなってしまいそうだ。
秘密があるほうが、探りたくなるというものだ。
スマホをバッグにしまい、帰ろうとした。
「美樹さん、ちょっとこれ!」
林に呼び止められた。
あれから多少よそよそしくはなったものの、特に変わらず美樹に接してきた。
「何?もう帰るんですけど」
「明日、榊原さんに確認してほしいことがあって。
この会社のロゴを商品のどこにどれくらいの大きさで入れるのか?聞いてほしいんですよ」
林の手には、榊原の名刺が握られていた。
「自分で聞いたら?」
少し冷たく返す。
「聞いてやって、美樹さんが」
社長が出てきた。
「美樹さんだと、ちゃんと話しを聞いてくれるから、榊原さんは」
「そうなんですよ、社長も気づいてましたか?」
林も合わせる。
「いや、そんなことないでしょう、誰が話しても同じですって」
否定しながら、もっと言われたいと思う美樹。
「多分、みんなそう思ってるよ、榊原さんは美樹さんだと優しく話すって」
「そりゃまあ、女だからでしょう?一応」
隠しているのに隠しきれていないのかも?
でもこのことを榊原に話すと、意識して距離を取られそうなので黙っておくことにした。
明日の榊原の来社が、ワクワクしてきた。
➖榊原さん!気をつけましょ➖
「そんなに言うなら、私が聞きますよ」
仕方ないというふうな言い方で、榊原の名刺を受け取った。
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