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2.
マフラーは校則ではどうなのー? と言ってるママの声が、背中の向こうで聞こえた。どうだったかな。
でも、マフラーはみんながして来ている。
校則を守っているかが問題じゃない。
みんながしているかどうかが、大事なの。
それに、これはあたしが作ったんだもん。
幼稚園の頃、ママに教えてもらったのが最初で、かぎ針編みができるようになった。編むと、どんどん大きくなっていくのがおもしろい。でも編んだら、ピーってほどくのも、またおもしろかった。あたしにとっては、ブロックで作って壊すのと、同じ遊びだったの。
編み物の本を見て、2本の棒で編む、棒針編みもできるようになった。
編み図を見ながら、模様が出来上がっていくのは、気持ちがいい。
パズルを仕上げているようだ。
ひたすら、「1、2、1、2」と数えながら集中するのは、何も雑念が入らなくて好き。
そして何より、みんなの反応がおもしろい。
初めて今年編んだマフラーをして行った日、あたしはどきどきした。
どう言われるかな。変だって言われないかな。
道や廊下では、誰も気づいてないみたいだった。
教室でマフラーを外したら、里穂ちゃんが気づいてくれた。
「あら? そよちゃんのマフラー、すてき! どこで買ったの?」
「えっと、買ったんじゃないの」
「え? お母さんに編んでもらったとか?」
「ううん、あたしが編んだの」
「えー! これ、そよちゃんが編んだの? 上手!」
里穂ちゃんの声が大きかったから、みんなが注目して、集まってきた。
「色がいいよね。紺色の糸に、いろんな色がぷちぷちって、入ってる」
どの色にするのか悩んだのよね。こだわって良かった。
「それ、ミックスヤーンて言うの」
「ヤーン、ヤーン!」
「お店で買ったのは、端っこがビラビラっと毛糸のふさがついてるでしょ。それつけないで、編んだお花をつけてるのが可愛い!」
あ、かぎ針編みのお花のモチーフもわかってくれた。
「うんうん。オリジナルって感じよねー」
「それに、ふんわりしてる! ふかふか!」
「えー? ほんとだ! ふかふかー!」
みんなが触りに来る。
あたしは恥ずかしくなって、ちょっとうつむく。
でも、輪の中心にいるのは、少しばかり嬉しかった。
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