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 マフラーは校則ではどうなのー? と言ってるママの声が、背中の向こうで聞こえた。どうだったかな。  でも、マフラーはみんながして来ている。  校則を守っているかが問題じゃない。  みんながしているかどうかが、大事なの。    それに、これはあたしが作ったんだもん。  幼稚園の頃、ママに教えてもらったのが最初で、かぎ針編みができるようになった。編むと、どんどん大きくなっていくのがおもしろい。でも編んだら、ピーってほどくのも、またおもしろかった。あたしにとっては、ブロックで作って壊すのと、同じ遊びだったの。  編み物の本を見て、2本の棒で編む、棒針編みもできるようになった。  編み図を見ながら、模様が出来上がっていくのは、気持ちがいい。  パズルを仕上げているようだ。  ひたすら、「1、2、1、2」と数えながら集中するのは、何も雑念が入らなくて好き。  そして何より、みんなの反応がおもしろい。  初めて今年編んだマフラーをして行った日、あたしはどきどきした。  どう言われるかな。変だって言われないかな。  道や廊下では、誰も気づいてないみたいだった。  教室でマフラーを外したら、里穂ちゃんが気づいてくれた。 「あら? そよちゃんのマフラー、すてき! どこで買ったの?」 「えっと、買ったんじゃないの」 「え? お母さんに編んでもらったとか?」 「ううん、あたしが編んだの」 「えー! これ、そよちゃんが編んだの? 上手!」   里穂ちゃんの声が大きかったから、みんなが注目して、集まってきた。 「色がいいよね。紺色の糸に、いろんな色がぷちぷちって、入ってる」  どの色にするのか悩んだのよね。こだわって良かった。 「それ、ミックスヤーンて言うの」 「ヤーン、ヤーン!」 「お店で買ったのは、端っこがビラビラっと毛糸のふさがついてるでしょ。それつけないで、編んだお花をつけてるのが可愛い!」  あ、かぎ針編みのお花のモチーフもわかってくれた。 「うんうん。オリジナルって感じよねー」 「それに、ふんわりしてる! ふかふか!」 「えー? ほんとだ! ふかふかー!」  みんなが触りに来る。  あたしは恥ずかしくなって、ちょっとうつむく。  でも、輪の中心にいるのは、少しばかり嬉しかった。
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