編んで。

１.

　身支度をして階段を降りてくると、ママが台所から飛び出してきた。
「そよちゃん、ハンカチ持った？ ティッシュは？ 健康観察の時に、持ってるかどうか、チェックするでしょ」

あたしをいくつだと思っているの。
ふう。
もう、中学２年だよ。
ハンカチ検査なんて、小学校の時の話だよ。
それを説明してる時間も気力も無いのでやめておく。

「ちゃんと持ってる」
ママがアイロンをかけた予備のまで、リュックに入っている。

「マスクは？ インフルエンザが流行ってきてるでしょ？ 」
「それも持ってるって」
　傘立てからシュッと傘を抜き取り、ドアに手をかけたところで、また呼び止められた。

「そよちゃん、やめて！　その何にも履いていない脚！」
　履いてないって、失礼な。
「スカートちゃんと履いてるよ」
「タイツ履きなさいって、この間買ってあげたでしょ」
　うーむ。
　校則ではタイツは禁止されてないから、いいかと思っていた。
　それで、買ってと言ったのだ。
「だって、誰も履いてないんだもん」
「また、誰もって。あら？　コートは？」
　学校には指定のレインコートがある。ベージュ色のコートだ。入学前にそれも必要だろうと揃えた。何回か着て行ったけど、それこそ誰も着ていない。はっきり言って……ダサい。
トレンチコートの成りそこないみたい。ステンカラーコートなら、まだいいんだけど。
「寒くないから、いい」
「風邪引いたら、元も子もないでしょ。せっかく買ったのにもったいない」
　もう、いいんだって。
「マフラーして行くから、いい。行ってきまーす」