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『え、八月からで良くて、慣れるまでは短時間で、その後正社員ならめっちゃいいじゃん』
「うん、そうなんだけど……」
『何か心配でもあるの?』
私はちょっと後ろめたい気持ちで、もう一つの条件を口にした。
「実はね、土日が仕事で、しかも、パートでも金土日は夜の八時まで入って欲しいらしくて……。そうなると、亮弥くんとの時間が……」
『あー……』
休みが合わなくなったら、二人でゆっくり過ごせる日がなくなってしまう。
「一応、こちらの希望としては、できれば土日のどちらかは休みが欲しいって伝えはしたんだけど、難しいかもしれない」
『まぁ、そうかもね。でも、それ以外は申し分ないわけでしょ? 収入はどうなの?』
「うん、週末に長く入るから、想定よりは落ちなくて済むかもしれない。社会保険もあるんだって」
『いいね』
「パートなら空いた時間で、起業に向けた準備もしていけるし……」
『とりあえず聞いた感じ、マイナス要素は俺とのことだけだよね?』
「まあ……」
『そんなことで悩むなんて、優子さんらしくないじゃん』
そう言われて、パチンと目が覚めた気がした。
『館山に行っちゃうことと比べたら、ぜんぜん会えるんだし、俺早く帰れるようになったから、優子さんが良ければ平日にでも会いに行くよ。たまには平日休みも取れなくはないし。とりあえずいったんパートで働かせてもらってみて、お互いにストレスになるならもう一度考え直すってこともできるんじゃない? 俺は、大丈夫だと思うけど』
「ほんと?」
『まぁ、もっと言えば、……あ、でもこれは言うとルール違反だよな……』
亮弥くんは自分を戒めるように言葉を引っ込めた。
「何? いいよ、何でも言って?」
『その……、一緒に住めたら一番良い気がするんだけど、優子さんはやっぱりそのつもりはない……んだよね?』
「え……」
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