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私はその言葉に驚いた。でも、亮弥くんがそう考えるのも無理はないかもしれない。
私がこれまで一緒に住むのをやんわり避けていた一番の理由は、いつか別れるかもしれないという気持ちがあったから。それに、仕事を辞めて起業するまでの不安定な時期に、同棲も結婚も、進めるわけにはいかないとも思っていた。
でも今は違う。具体的な結婚の時機はまだこれから話し合うとしても、すぐにでもと言われた以上、そう遠い未来だとは思っていない。その時が来れば、当然一緒に暮らすつもりでいる。
そんな私の気持ちを知らない亮弥くんは、返事を待たずに話を続ける。
『でもさ、一緒に住めれば毎日会えるし、家賃とか光熱費の負担も少しは減るだろうし、つか俺が持てる部分は持つし。優子さん少なからず収入は減っちゃうわけだし、そうじゃなくても起業を考えたら出費は減った方がいいでしょ? ……あ、それに、一緒に住んでも休みが別々だったら、それぞれ一人の時間を持てる感じになって、優子さんの自由も守れてちょうどいい気もする……』
その発想に、私は思わず笑ってしまった。でも、休みが合わないことを前向きに捉えてくれて、ありがたい。
「たしかに、お互い同居に慣れるにはちょうどいい距離感かもね」
『え、じゃあ、アリ?』
「うん、あり」
『マジで!!』
驚きの入り交じる嬉しそうな叫びに、こっちは笑いが止まらなくなる。
『マジで一緒に住んでくれるの!?』
「うん、亮弥くんが良ければ、そうしよう」
『うわ、マジでっ……! 良かった、俺、この前すごく必死だったから別居でも良いって言ったけどさ、後になってめっちゃ後悔してて……それ言わなくてもOKもらえたんじゃないかって。でも言ったからには取り消せないし……。あー、でも、良かった』
そんなに悩ませていたのかと思うと、なんか申し訳ない。でも、一緒に住みたいと言っていた亮弥くんが、それを諦めてでも私と結婚したいと言ってくれたことは、正直なところ嬉しかった。
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