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「それじゃ、一緒に住む方向で、ル・ピュールも受けることにするね」
『うん、わかった』
「帰ったばかりなのに聞いてくれてありがとう。ご飯まだなんでしょ?」
『うん、またコンビニで買ってしまいました……』
「一緒に住んだら平日は作ってあげるから、大丈夫」
『マジで? 最高しかないんだけど』
亮弥くんが毎日家に帰って来て、私の作ったご飯を食べてくれるなら、私も嬉しい。なんだか急に、楽しみになってきた。
「それじゃ、ご飯ゆっくり食べてね」
『うん、あ、優子さん……』
「うん?」
『相談してくれてありがとう』
一瞬驚くとともに、胸がトクンと鳴った。
その一言で、自分の中の変化を知る。
電話を切って、ベッドに寝転がった。二人でシェアできるロングクッションの枕には、一昨日までここに居た亮弥くんの匂いが残っている。
プロポーズを受けて、まだたったの四日。その前は、このまま終わるんだろうとさえ思っていた。
なのに今の私は、もう完全に、亮弥くんを伴侶として見ている。大事なことは二人で話し合って決めようと、ごく自然に、思うようになっている。この先もずっと亮弥くんと生きていくことを、当たり前のように信じられている。いつか終わるだろうと思っていたことの方が不思議なくらいに。
そんな気持ちになれたことを、幸せだなーと思っていたら、涙が込み上げた。
こんな時が来るなんて考えもしなかった。
亮弥くんと出会えてから、私の人生に無かったはずのものがたくさん入って来た。
それはすべて、亮弥くんがいつも諦めないでくれたから。
根気強く私のことを愛してくれたから。
ありがたくて、亮弥くんと重ねて来た時間の全てが愛おしくて、次々涙がこぼれた。
私はこれから、どれだけのことを返していけるだろう。
私にできることなんてそう多くはないけれど、良い時も悪い時も、思いやって、愛を持って亮弥くんの側にいよう。
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