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「あは……、なんだろ。最近涙もろくて……」
慌てて涙を拭う。そんな私の頭を、亮弥くんが優しく撫でて、そのまま自分の肩に引き寄せた。
「いいじゃん。俺は逆に少し強くなったから、優子さんは泣いていいよ」
「そうなの?」
「うん、そんな気がする」
「ふふ……」
私は亮弥くんにぎゅっと抱きついた。
幸せすぎて、次々涙がこぼれてくる。
こんな人を、どれほど渇望しただろう。今思うと、長く辛い人生だった。心の孤独は一生のものだと覚悟していた。でも、そうじゃなかった。もう、終わったんだ。
「優子さん」
亮弥くんが私の顎に手を添えたので、私は顔を上げた。
「涙止める魔法かけてあげる」
「今泣いていいって言ったのに」
「そうだった」
亮弥くんは笑いながら、頬の涙をキスで掬っていく。
目を閉じて委ねると、唇が優しく触れるごとに心が凪いで、今度は緩やかな幸せが私を満たしていく。
やがて唇へとたどり着いたキスは、涙の味がして、それはあっという間に舌の上に溶けてなくなった。
「結婚式は後でもいいけどさ」
ベッドに寝転がって、それぞれスマホで賃貸情報を検索していたら、ふいに亮弥くんが言った。
「それだったら先に写真撮りたいんだけど……」
「写真?」
「結婚アルバムみたいなやつ、あるじゃん。ドレス着て、写真撮るの」
亮弥くん、そんなことしたかったのか、と私は驚いた。
「そういうの、結婚式の時に一緒にできるんじゃないの?」
「そうだけど、優子さんが一日でも若いうちに撮ってあげたいの」
「え、私?」
その言葉に、私はいよいよ驚いた。
「だって、優子さん、そういう自分が綺麗に写ってる写真無いんでしょ?」
「そうだけど……なんでそれを……」
亮弥くんはたまに、私が言った覚えのないことを言う。
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