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episode1 帰ってきたお兄さん
夏前、職場であるマツエク/ネイルサロン・ファンルージュルのスタッフルームで昼休憩中の話題はお盆休みはどこへ行くか、誰と過ごすか、女子はキリなく話す。
「志桜は彼氏いないし家で一人何するの?」
「彼氏いないとか言わないでよ、いいの一人で涼しい部屋でのんびりするから」
「出かけないとは…一戸建てに一人だよ?寂しすぎるでしょ」
「そうでもないよ、実はね……」
なぜ寂しくないか、子供の頃私を可愛いがってくれた近所のお兄ちゃんが留学先から帰ってくると聞いていたから。
名前は甚野春喜、春ちゃんだ。
楽しみで仕方ない私に予期せぬ話が舞い込んだのは夜の事。
「志桜ちゃん、心苦しいお願いだけど……春喜と一緒に住んでもらえない?」
あまりに突飛なお願いにすぐに返す言葉が出て来なかった。
「実はね、最近おじさんの具合悪くて気になるの。単身赴任だから尚更心配だしね。おばさん思うの、志桜ちゃん一人だし女の子だからそれも気がかりでいたら春喜が帰ってきたじゃない、だから兄妹みたいなもんだしどうかなと思って」
さらさらと言葉が頭に入るが当の私の頭の中は真っ白。
「春…春ちゃんは、私と暮らすの大丈夫?」
「大丈夫よー、だってあんなに可愛いがってた志桜ちゃんとずっと一緒にいられて、志桜ちゃんに悪い虫つかないように守ってくれるわよ」
悪い虫て……
「春喜だもの、心配ないわ。男手があると何かと便利よ。下僕のように扱き使ってやればいいわ、ね?」
ね?っておばさん……
「おばさんも春ちゃんもいいなら、了解です!」
嬉しいとお礼を言われ、何だか待ち遠しくなっていた。
春ちゃんか、何年ぶり?今はどんな感じになってるのかな。
イケメン?逆にモサッとぽっちゃり?
大好きなお兄さんの春ちゃん、早く会いたいな。
「じゃあおばさん行くわね、春喜をよろしく。あ、そうだ春喜ねぇ今髪が金髪だからビックリしないでねー」
……え?金髪!?
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