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閑話~問題児トリオの置土産~
「…リリティーゼの錬金術と魔法は相性が悪い。どちらも使える問題児トリオは野放しが怖い。レシオール様に至急対処してもらわないと…」
片眼鏡を掛けた蒼の瞳と髪の持ち主
魔法神ヴァルファル
は、淡く光り輝く召喚魔法陣の上で一人ゴチた。
問題児トリオ
錬金女神リリティーゼ
守護剣神アルディード
守護魔神エルレット
は、この神界の中で一番新しく、またこの世界を発展させるために大変重要な神々である。
ただ人上がりでまだ若いせいか神界の生活に馴染めないらしく地上に戻りたがり、神界と地上を隔てる門番と年がら年中悶着を起こしボコボコにしている。
なのでついこの前接触禁止の制約を付けてやったところ、三人ともブン剥れてしまったらしい。
で、この有り様だ。
「おーい!ヴァルファル、大変だ!!!って、なんだ?この魔法陣…。見たことないぞ?」
燃えるような真紅の髪と瞳のゴツい体の戦神カルクゥが走ってきた。
なぜか顔にみみず腫があり、目の周りや顎が青くなっている。
「これは召喚魔法陣。私もほとんど見たことない。珍しい魔法で、世界には両手で足りるほどしか使える者がいない。…神々を呼び出す召喚陣なんて、有史以来初めてだ」
「へえ~神を呼び出す、ねぇ…。で、拒否したん?」
カルクゥの言葉に
「いや。喜んで飛び出ていった。レシオール様に報告しないと」
「…あ?まさか…」
「あぁ。問題児トリオが地上に降りた」
「やべえ!境界門使えない!!!この召喚魔法陣で地上に…」
「無理。向こう側から一方通行になってる。リリティーゼの錬金術だから、私でもどうにもならない。境界門を開けて連れ戻すしかないが…境界門が使えないとは?」
「問題児トリオが、普通の門なら倒れるほどの鍵を錬金術で取り付けやがった!レシオール様が泣いてる」
「…あぁ…そちらも対策済みだったか…。エルレットがリリティーゼとアルディードのフォローするから、対策が追い付かないな。ところで…カルクゥ。君、その顔どうしたんだ?」
するとカルクゥは視線を泳がせ、肩を揺すった。
「え~いやぁ~…ハハ…。近頃、アルディードもエルレットも俺と模擬戦してくれなくてさ?実力を測れないから…リリティーゼの昼寝にな?」
「………良かったな?青アザとみみず腫で済んで」
なんでコイツは学習しないのだろう?
そう思いながら言葉をかけた。
自分が魔法の訓練を真面目にしないアルディードとエルレットを奮起させるためにリリティーゼにチョッカイを出してズタボロにされたの見てただろうに。
気の強いリリティーゼに顔を引っ掛かれ、アルディードとエルレットにボコられ応戦しただろうが、ヤられた…といったところだろう。
「君のその顔を見てると、"バカの勲章は欲しくない"とシミジミ思うよ」
「うるせー!欲しくてみみず腫も青タンも貰ったわけじゃねぇよ!勲章じゃねえし!!!」
カルクゥは文句を付けるがヴァルファルはカルクゥの顔を見つめるだけで、カルクゥとしては頗る居心地が悪い。
「…まぁいいか。境界門を見に行こう」
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