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「…あ~。鍵が外れない…。いっぱいあるし、先は長いなぁ…」
白い男、創世神でありレレラルの最高神レシオールが途方にくれたように巨大な門を見上げる。
カーブを描いた門の外周にはビッチリ隙間なく鍵が張り付き、鍵と鍵の間は鎖で繋がれている。
鎖には無数の細い鎖が絡み付き、嫌がらせのように(いや、間違いなく嫌がらせだ)鍵が複雑に絡んでいた。
門の中央に巨大な鍵により束ねられた鎖が絡み付き、門を開けることは不可能だ。
門を開けるには…
「鍵を開けるしかないですね。でもこれは…開けるのに2、3百年は軽くかかりそうです…が、やるしかありません。?…?!この鍵!鍵穴に小さい鍵が嵌まってる!小さい鍵を外さないと大きな鍵穴に鍵が入らない…。リリティーゼ…なんて根性してるんだ…」
「ヴァルファルのはまだいいじゃない。僕の掴んだ鍵は、鍵穴の中に鍵が4つ入ってるよ?いっちばん小さい鍵の鍵穴は針金サイズ。…別の鍵から始めようか?と思ったけど鎖が絡み付いてて、厄介なの外さないと手出しできない…。心折れそう…」
ヴァルファルのリリティーゼに対する呻き声のような恨みごとに、レシオールが半泣きで言い返す。
カルクゥは魔法は使えても頭はちょ~~~~~っと足りないのでこういう場合は戦力外で、ノホホンと中央の束ねられた鎖からズラ~っと長く伸びた鎖の先端を摘まみ上げた。
「?鎖と鎖を跨いで蟻みたいな鍵がゴチャ~っと付いてっけど?これ外さないと無数にある南京錠みたいな鍵、外れないんじゃね?」
境界門から長く伸びた鎖にまで目が届いて居なかったレシオールとヴァルファルが慌てて鎖の先端まで行くと、目を凝らして膝から崩れ落ちた。
目を凝らさないと見えない鍵なんて、鍵穴に何を使えば良いのかレシオールにもヴァルファルにも分からない。
「…こんな真似仕出かすのはエルレットだ…。鍵穴の中に鍵を突っ込むのはリリティーゼ。封鎖をするのは王家の人間の考える普通のこと。つまりアルディードの案だろう。…早く地上から問題児たちを回収しないととんでもないことになる…!」
「たぶんダメだろうとは思うけど、カルクゥ。君、この小さい鍵を剣で壊してくれない?」
レシオールの願いを聞いて、カルクゥが背中の大剣を前に構えた。
振りかぶる!
ガシャンッ!!!
「…え?あっけない…」
「ただの嫌がらせだけだったのか?」
レシオールとヴァルファルが不思議そうに言った途端
プププププ…!
「「グワッ?!クサッ!!!」」
「止まらねぇ!自分でも臭い!!!」
レシオールとヴァルファルが鼻を摘まむ。
激臭がカルクゥのお尻から漂う…。
プププ~!!!
音はラッパのようで、とても激しい。
「………これはもしかして?」
「………叩き壊したらカルクゥの二の舞ですね…。壊れやすく造ってるかもしれません。何せエルレット作ですし。慎重に鍵を外しましょう。…カルクゥ。済まないが離れてくれないか?鼻を摘まんでいると鍵が外せない」
ぷぅ~ぷぅ~とおならを音を鳴らして涙目で鼻を摘まんでいるカルクゥにヴァルファルが声をかけた。
「ひでぇ…。俺だって臭いんだぞ?!勝手に腹はゴロゴロ鳴ってるし!」
「それって…もしかして腹下しの前兆じゃない?」
「ありえますね。リリティーゼもエルレットもコーディアルや薬関係調べるの得意ですし。エルレットなら腹下しの薬を仕込んでいてもおかしくないですね」
ピー!
グルルルルルーーー!!!
「ギャー!きたーーー!!!」
「レシオール様!カルクゥのおバカが三人組の逆鱗に触れた、って何したんです?臭いし汚いし!え?なんですか、これ?!もしやリリティーゼってば、地上に行ったの?!そんなぁ…お茶会にけーき頼もうと思ってたのに…。私も連れ戻すために鍵を外すお手伝いします!暇をもて余してるのは境界門まで来てちょうだい!リリティーゼのけーき、食べられませんよ!!!」
愛と美の女神シェファが鍵を外す作業に加わったが、それでも道のりは遠い…。
『ベーだ!あんな退屈なところ戻んないよーだ!!!』
『『そーだそーだ!戻んねーよ!!!』』
と問題児トリオの声が聞こえる。
「「「「「「「イヤよ!けーき食べたい!!!なんとしても神界に戻ってもらうんだから!!!」」」」」」」
「「「「「「「…僕(私or俺)たちはエルレットにらーめん作ってもらおう!…さ、頑張ろう!」」」」」」」
「…僕が三人を呼び戻したい理由は違うけど、手伝ってくれるならなんでもいいか」
レシオールの言葉には誰も反応せず、ケーキにド填まりしている女神たちと食事に填まっている男神たちは必死に魔法で細い糸を作り、蟻のような形の鍵を外していくのだった。
神様の2、3百年なんて大したことはないが、集中力が切れるのが難点だ。
ただし
"美味しいもの"
に目覚めた神様たちのど根性は侮れない。
料理と甘味も作れるリリティーゼと料理を作れるエルレット。
アルディードは食べるのが専門だが、リリティーゼもエルレットもアルディードにはなんでも作る。
だからアルディードに嫌われたら美味しいものにはありつけない。
美味しいものをたべるため、三人を連れ戻そうと一致団結で神様たちは境界門の前に鍵開けのため、ず~~~っと張り付いている…。
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