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「逆っていうと? 好きだとおしゃれをすすめないってこと?」  その質問に、なぜか木下は渋い顔をした。 「ん…………男側はな。独占欲みたいなさ。おしゃれになって、ほかの男に見つけられると嫌だなとか思ったりするんだよ。恋愛感情があると特に」 「ふーん」と返事をしてお茶をすすっていると、唐突に、木下が数分前に口にした言葉が思い出された。  思い出したのはきっと、その言葉も、ふーんと、気のない返事と共に吐き出されていたからだろう。  急に、ほほに熱を感じた。おしりの辺りがムズムズして、だけど不快感はほとんどない。  クリスマス直前の駅前のような、温度のあるざわめきが体全体に広がっていく。  ふと木下と目が合うと、バチリとスパークが発生したような気がして、あわてて顔を逸らした。  心臓が高鳴っている。  独占欲を持たれているかも知れない。  そしてその【かも知れない】を、嬉しいと感じている。  横目で木下の様子をうかがうと、いかにも【やっちまった】な顔をしていた。  こいつとしては、あからさまな独占欲を見せてひかれるのが恐かったんだろう。ヘタレめ。  ひとつ深呼吸をした。  ふふん、木下よ。慈悲深いこの私がお前を安心させてやろうじゃないか。  震えないように意識すると、変に上擦った声が出た。 「ね、ねぇ。さっきの『そのままでいい』ってさ。恋愛感情……みたいな?」 fin.
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