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「だってさ、マフラーの巻き方ひとつでも言われるわけよ」  机を挟んで座る木下に向かって、私はピシリと指を立てる。  私の人差し指を見ながらナスの揚げ浸しを咀嚼した木下は「……なんて?」と、話の続きをうながしてきた。  甲高い声で斎藤絵美里のマネをしながら「『もうちょっとおしゃれな巻き方すればいいのに』……って」と話すと、木下はいかにも気のない様子で、 「ふーん……。そのままでいいと思うけどな」と、みそラーメンをすすった。  正月休みが終わり、通常営業に戻った学食でのことだ。付き合いのある女子グループと夕食をとって、ダラダラと小1時間の雑談のあと各自解散となった。    そこに入れ違いにやってきた木下をつかまえて「女子同士もけっこー大変だ」とグチると、眉根を寄せて【よーわからん】な顔をしてきたので、慈悲深い私が懇切丁寧に説明してやっているところである。 「まーエミちゃんってあれなのよ。リケジョでもおしゃれ楽しもーよ。って感じでさ」  意識高い系……と言うほどでもないのだが、人間は誰でもおしゃれしたい欲がある! と信じてやまないタイプらしい。  実際、彼女のおしゃれ指南によっておしゃれに目覚めた同期や後輩も数名いるとかいないとか聞くので、拍車も掛かり放題なのだろうが、私の方には凸してこないでほしい。
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