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図書室奥にある、貴重図書を収納するための蔵書室。参考資料を求めて入った青木信二が見たのは、書架棚の前に蹲る小川優の姿だ。泣いているのか、と一瞬思って、すぐに違うと気づく。
彼女は背を丸めて手元を忙しなく動かしている。そこからでろりと長く床を這うのは、真っ赤な毛糸の塊に見えた。
「なにしてるの?」
「マフラー編んでる」
ぼそぼそと聞き取りづらい声で優が答えた。目は手元に向いたまま、指は器用に金色の編み棒を動かして。なるほど確かに手編みのマフラーであるらしい。
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