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節分SS
中学時代
(Twitterに上げたSSを転載)
*
「この豆をどうしろってんだよ」
顔を顰める俺に、夏目はにやりと笑ってみせる。
「赤ぁ。これは鬼にぶつけるもんなんだぜ?」
かっこつけて言った割には微妙な使い方だ。というかこれ、節分用の豆か。急に炒り豆なんて渡すもんだから意味が分からなかった。
無言のままじとりと見つめると、夏目は悪戯っぽい表情を苦笑に変え、何かを持ち上げ顔前に持ってくる。
「やー、ほんとは渋川さんに頼むつもりだったんだけど、似合いすぎて怖いだろ?」
鬼の面で顔を隠す夏目に、もしこれが渋川さんだったらと想像する。軍人上がりとも噂される渋川さんに、鬼の面。
……うん。それは似合いすぎて禁忌の域だろう。桃あたりがびびり散らしそうだ。確かにと苦笑すると、夏目は俺の髪をかき混ぜる。
「……んだよ」
「いや?良い奴だなって思って」
「……意味わかんね」
出会った時から思っていたが、こいつ人のことを好意的に解釈しすぎではないだろうか。そもそも俺は助けようなんて思っていなかった訳で――
考える俺の腕を、夏目はぐいと引っ張る。
「という訳で、俺が鬼やるから!あいつらもじきこの公園に来るし」
先に打つける練習でもしておく?
夏目の言葉に内心首を傾げる。
練習……?節分に精通していない俺だが、それは一般的でない気がする。
「じゃ、早速!」
やるのかよ。出会って二ヶ月ほど経つが、こいつのノリには未だ慣れない。ここまでしつこい奴なんて、他には甲斐くらいしかいなかった。かくいう奴も意味深に笑うだけで何をしてくる訳でもないのだが。
夏目に促され、いやいや豆を投げる。ゆるい投擲に夏目は微妙そうな顔をする。
「威力、足りなくないか?」
威力、必要か?
ツッコむのも面倒で、黙って威力を上げる。節分、絶対こんなんじゃねぇと思う。
びゅん、投げると豆らしからぬ激しい音が返ってくる。ごりっていったぞ大丈夫か。
「ちょっ、痛ぇ!痛ッ!」
「……」
「赤ッ? ちょっとー!」
強すぎるとか知らねー。
俺と夏目の攻防に遅れて到着した他のメンバーが参加し、族同士の抗争のようになったのはまた別の話。
「おい、Coloredの幹部が喧嘩したってよ」
「聞いた話では鉄砲撃ち合ってたって話だぜ」
すっかり校内で噂になっている。鉄砲というのは、水鉄砲に豆を装填したことだろうか。弾詰まりの頻度を思うと、案外素手で投げた方が威力あったなぁ。
「怖い話だね」
考え事にふけっていると、甲斐に話を振られる。俺は甲斐に黙ってこくりと頷いた。Coloredやべー。
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