シェイクシェイクシェイク ※

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シェイクシェイクシェイク ※

あの夏1巻の特典につけた話③ 中学生時代 IF? ***********  へにゃり、笑う赤に微笑み返す。いやこれホント、どうしたものか。じとりと渋川さんを睨むと、ウインクを返される。男くさいし、何もかわいくない。舌打ちをし、コーラを飲めば、「クソガキ」とカウンターから罵られる。何がクソガキだ。そもそも渋川さんがお茶とウイスキーを入れ間違えなければこんなことにならなかったんじゃないか。えへへ、と笑う赤に、「なー?」と言うと、機嫌の良さそうな声が返ってくる。うーんかわいい。なんで酒の匂いに気づかずに飲んだかなんてどうでもいい。赤だってそんな日くらいあるよね!!! 完璧な赤が気づかないならそれはもうしょうがない。全人類気付くことなんてできないだろう。だが渋川さんは許さん。 「見ろよ渋川さんッ! この赤の酔っぱらった顔! 自分の罪をとくと思い知れ!!」 「あらぁ、かわいいわねぇ」 「だろぉ、普段あんなにかっこいいのにへにゃへにゃ笑っちゃっても~かわいい」  じゃねぇわ。いや、赤はかわいいしかっこいいけども。最強だけども。そうじゃなくて。 「……酔いをさまさせなきゃまずいだろ」  色々と。色々と? 色々ってなんだ。自分の思考に首を傾げつつ、赤にせっせと水を飲ます。んうーと唸りながら水を飲む赤は、文句なしにかわいい。どうしよう、かわいいを連呼しすぎて脳が溶けそうだ。 「渋川さん、俺死ぬかもしれない……」 「さっさと死んだ方が世のためかもな」 「クソおやじ」 「あらぁ? 今なんて言った?」 「さっさと水寄越せって言ったんだよ」  はぁ、とため息を吐きつつ渋川さんは水を用意してくれる。赤の口元に持っていくと、一生懸命飲みはじめた。不意に、邪な考えが頭を過る。これ、もしかして指を差しだしたら指を吸うんじゃ? そろり、グラスの代わりに指を指しだす。渋川さんに冷たい視線を送られるが無視だ無視。  赤は、俺の指を不思議そうに見つめていたが、俺がちょいちょいと指を動かし促すと、ぱくりと指を口に含んだ。水を飲む要領でちゅうちゅうと指を吸う赤。もしかして俺、興味本位でとんでもないことをしてしまっているのでは……? ちらりと渋川さんを窺うと、拳が構えられていた。やはりアウトか。指を赤の口から取り出す。テラテラと唾液に濡れたそれは、自分の指であるにもかかわらずひどく厭らしい。 「赤に言ってやろ。青が擬似フェ──」 「うわあぁぁぁぁッ!!」  やっぱり!? そんな意図はなかったけどそうなってるよな!!? 動揺する俺の服の裾を、赤はクイクイと引っ張る。なんでしょう。罪悪感でそっち見れないんだけどなんでしょう。 「といれ」 「トイレはあっちだろ、赤。連れてってやろうか」  足元が覚束ないのだろうと肩を支える。予想に反し、赤はふるふると首を振り否定する。 「てつだって」 「手伝って!?? ちょ、渋川さん!! あ、だめだ! 渋川さんうっかり息子捻り潰しそう」 「俺のトイレ毎回一大事じゃねぇか」  冷静に突っ込んでくる渋川さん。そんな暇あるならなんとかしてくれ。赤はもじ、と落ち着きなく足を組み直す。そんなに差し迫ってんの!? 「渋川さん……これ、アウトだと思う?」 「何を今更」  確かに。それもそうだと赤をトイレに連れていく。んん、とズボンのチャックをもどかしそうに引っ張る赤はしかし、大した力が出ないのかチャックを降ろすことができない。仕方ないな、とチャックを降ろし気づく。あれ? これ、自分のだったら手突っ込んでファスナーから出せば済む話だけど、人のだったらそれもなかなか難しくないか? まして今は赤の体を上体で支えながらだ。下手をするとズボンを汚してしまいそうである。となると、ズボンと下着を膝辺りまで下ろすのが理想的なのだが酔った相手にそれをするのはいくら思慮の浅い俺とはいえ憚られるものがある。そうこう考えている間に、赤は限界が近づいてきたのか早くと急かしはじめる。 「あお、もれる……」  漏らすのは嫌だと半泣きになる赤に、ええいままよとズボンを下ろす。下着を降ろし、赤のブツを軽く握る。橙にばれたら殺されそうだ。 「んん……」  赤は弱々しく俺の体に縋りながら用を足す。水が小便器を叩く音が聞こえる。あれもこれも全部渋川さんのせいだ。人のせいにしながら、赤の様子を窺う。酔いのせいか、感度が上がっているらしく、用を足すだけにもかかわらずひどく辛そうだ。 「赤―、終わったか」 「おわっ、た」  ようやく解放される、と赤のブツを軽く振る。赤は悲鳴のような声を上げ俺にしがみついた。 「あお……?」 「だってちゃんと水滴飛ばさないとだめだろッ」  咎めるような目に、言い訳をする。俺だってまさかこんな反応が返ってくると思わなかったんだって。いや本当に。下着を上げ、ズボンを元通りに戻した俺は、手を洗いながら固く誓う。もう赤にお酒飲ますのはやめておこう。
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