採用です

13/14
前へ
/174ページ
次へ
「さっき、震えたのって、元旦那を思い出したから?それとも俺に抱きしめられて嫌だったから?」 私は自分のグラスを見つめたまま、三上さんの方を見ることはできない。 「まだ、その、全般的に男性との近過ぎる距離は今もちょっとダメでみたいで。会社でも触れるぐらいの距離になると、ちょっと離れて避けたりしてます」 「今日みたいに二人で飲みに行くのとか厳しかった?俺とさっきみたいに、バーに一緒に行くのは大丈夫だったの?」 「三上さんだし、大丈夫かなって。前も行ったことあったし」 三上さんには別にそんなに苦手意識とか、嫌悪感とか、わかなかった。 逆に昔の方が、そうゆう感情を持ってたかな、三上さんに。 「俺って、安全パイってこと?」 「安全っていうわけでは。ただ昔の方が苦手意識強かったかな。でも今は、信用してもいいかなって」 「信用?」 「それに私が嫌だと言えば止めてくれるかなって」 三上さん、また大きなため息だ。 「俺、そんなプラトニックな恋愛したことないけど。どっちかと言うと肉食系」 三上さんからプラトニックなんて言葉が出るなんて意外だけど。 以前も、いろいろ女性との噂は事欠かなかったようだし。 3回目にもなるお泊りで手を出されない私って、どうなのかと思わないでもないけど。 いずれにしろ、私、ちょっと拗らせ系になってる? 「私、帰ったほうがいいですかね?」 「こんな時間に帰せるわけないでしょう。あんな、うなされるのを見た後だし」 三上さんは私からグラスを取り上げる。 「肩、抱いても大丈夫?」 「多分」 三上さんは左腕で私の肩を優しく包むように抱く。 「少しずつ慣れていくっていうのはどう?急がないから」 三上さんに触れられるのにってこと? 「私、ダメかもしれないですよ、もう男の人と出来ないかもしれないし」 一応、肉食系って言ってたし。機先を制するか。 「だから少しずつ。杏が嫌がるようなことはなるべくしないようにするし、安心して気持ちが良くなるようにするから」 普通に杏って呼んでませんか? 「さっき、三上さん、プラトニックは無理だって言ったじゃないですか?」 「無理とは言ってない。なるべく理性で欲望をコントロールするように努力します」 「そんなの楽しくないんじゃないですか?」 「杏がそばにいてくれるなら、努力はしてみる」 元俺様上司が何を言う。ちょっと可笑しくなってしまう。 プラトニックな肉食系? 「今、笑っただろ?」 バレましたよね。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

96人が本棚に入れています
本棚に追加