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「さっき、震えたのって、元旦那を思い出したから?それとも俺に抱きしめられて嫌だったから?」
私は自分のグラスを見つめたまま、三上さんの方を見ることはできない。
「まだ、その、全般的に男性との近過ぎる距離は今もちょっとダメでみたいで。会社でも触れるぐらいの距離になると、ちょっと離れて避けたりしてます」
「今日みたいに二人で飲みに行くのとか厳しかった?俺とさっきみたいに、バーに一緒に行くのは大丈夫だったの?」
「三上さんだし、大丈夫かなって。前も行ったことあったし」
三上さんには別にそんなに苦手意識とか、嫌悪感とか、わかなかった。
逆に昔の方が、そうゆう感情を持ってたかな、三上さんに。
「俺って、安全パイってこと?」
「安全っていうわけでは。ただ昔の方が苦手意識強かったかな。でも今は、信用してもいいかなって」
「信用?」
「それに私が嫌だと言えば止めてくれるかなって」
三上さん、また大きなため息だ。
「俺、そんなプラトニックな恋愛したことないけど。どっちかと言うと肉食系」
三上さんからプラトニックなんて言葉が出るなんて意外だけど。
以前も、いろいろ女性との噂は事欠かなかったようだし。
3回目にもなるお泊りで手を出されない私って、どうなのかと思わないでもないけど。
いずれにしろ、私、ちょっと拗らせ系になってる?
「私、帰ったほうがいいですかね?」
「こんな時間に帰せるわけないでしょう。あんな、うなされるのを見た後だし」
三上さんは私からグラスを取り上げる。
「肩、抱いても大丈夫?」
「多分」
三上さんは左腕で私の肩を優しく包むように抱く。
「少しずつ慣れていくっていうのはどう?急がないから」
三上さんに触れられるのにってこと?
「私、ダメかもしれないですよ、もう男の人と出来ないかもしれないし」
一応、肉食系って言ってたし。機先を制するか。
「だから少しずつ。杏が嫌がるようなことはなるべくしないようにするし、安心して気持ちが良くなるようにするから」
普通に杏って呼んでませんか?
「さっき、三上さん、プラトニックは無理だって言ったじゃないですか?」
「無理とは言ってない。なるべく理性で欲望をコントロールするように努力します」
「そんなの楽しくないんじゃないですか?」
「杏がそばにいてくれるなら、努力はしてみる」
元俺様上司が何を言う。ちょっと可笑しくなってしまう。
プラトニックな肉食系?
「今、笑っただろ?」
バレましたよね。
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