お土産は明太子

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お土産は明太子

翌朝、三上さんが美味しいコーヒーを淹れてくれたのだけど、頭痛がハンパ無かった。 「鍵、持ってて。もう返さなくていいから」 ずっと昔、何度かポストに返したはずの鍵がまた私の目の前にある。 「好きな時、来ていいし。ちなみに来週、火曜から4日間出張だから、部屋、自由に使ってていいよ。会社からなら、こっちからの方が近いんじゃない?」 近いけど、これを持ち歩くのは、それはそれでプレッシャーかな。 「大丈夫です」 テーブルの上の鍵を三上さんの方に押し返す。 押し返したはずの手を握られる。 「こっちが大丈夫じゃないんだって」 さっきより強く握られる手。 手、大きいな。 そんな真っ直ぐ見つめられると、視線を外すしかなくない? 私の負け。 「預かっておきます」 「金曜には帰るので、一緒にご飯でも食べよう。お土産、買ってくるよ」 「どこまで行くんですか?」 「福岡と長崎」 「明太子とカステラ」 「お土産には反応いいね」 三上さんには苦笑されてしまった。 こんな話が出来るようになるなんて、意外すぎる展開で、私の気持ちがついていけてない。
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