3_正直に言え!落としたのか?盗られたのか?…まさか捨ててないよね??

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3_正直に言え!落としたのか?盗られたのか?…まさか捨ててないよね??

「ふざけてんじゃないわよ!このクソガキが!!!」  そんな怒号と共に宙を舞い壁に叩きつけられたいるのが件の徹。静音は人の相談を受けるので中学時代に自室を防音加工しているので、お店側には聞こえてないと思われる。  外から見るのは初めてだけど、自分もあんな感じで吹っ飛ばされているのかなと震える。用意していた救急箱を持って徹に駆け寄ると意識を失っているので介抱する。  介抱している間に吹っ飛ばされる事になった経緯を振り返る。  近くでフーフーっと荒い息を吐いている猛獣…じゃなかった!静音が昨日の予定通り、朝に自室に徹を呼び出したのが事の始まり。  挨拶もそこそこに静音は徹にマフラーをどうしたのか訊ねた。徹は物凄い気まずそうにしてたが、告白の時に静音に相談をしていた手前少しづつ話し始めた。  目覚めない徹を猛獣のようになった静音が睨んでいたので、お茶を勧める。少しでも落ち着かせないと目覚めた瞬間にまた静音の拳が飛んでいきかねない。  簡単に言うと落としたり盗まれたりという仕方がない要因ではなく自ら捨てたらしい。理由は恥ずかしかったからだそうだ。とはいってもせっかく彼女が作ってくれたマフラーだ、ごみ箱になんか捨てられないので、そこで変に扱わないと思われるフラワー皆城の前に捨てたらしい。  うん、なんでそこで町の平和を守ってる警察じゃなくて花屋なんだろうね!フラワー皆城の信頼度おかしくね!?  再度静音が理由を確認した後に間違いないと言うと、高校生は宙を舞って昏倒という貴重な経験をする事ができたというわけだ。  徹がうめき声をあげて目を開ける。体の痛みに違和感を覚えながら何が起こったのかを思い出そうと焦点の合わない目をしている。寝たわけじゃないのに意識が無くなってるって怖いよね…。  そんな事を思いながらも、落ち着ききってなかった静音が殺気を放ったので、俺は慌てて静音を羽交い絞めにする。そんな光景を目にしてギョッと目を剥いてこちらを見た後、さっと青ざめた。どうやら意識を失った原因を思い出したようだ。  二人の間に俺が入った形で二人を少し離して席に着かせる。 「イニシャル入りのマフラーを付けて学校や町で茶化されるのが恥ずかしいのが分からないでもない。でもせっかく彼女が作ってくれたものだぞ?静音の家の前とはいえ捨てるのはどうなんだ?」  素直に謝れ!と徹に念を送ったが、徹は受信機が壊れているようで上手く受け取れなかったようだ。 「明君や静音ちゃんは違うかもしれないけれど、俺たちは学校と町で恥ずかしさを感じると死にたくなっちゃうだよ!そりゃ初めての彼女からのプレゼントでメッチャ嬉しかったよ!?でも、ずっといじられる事を考えたら耐えられないから、仕方なく捨て」  ガタッ!  ガシッ!  ビクッ!  三者三様の行動を取った。静音の敵意が自分に向けられてないと素直に体が動くものだと新たな発見をした。そうでなかったら徹は再度昏倒したかも。  今度から自宅の救急箱に鎮静剤を入れておいた方がいいかもと真剣に検討する。 「徹さ聞くけど、千絵ちゃんと付き合ってるの嫌なの?」  俺は安心できそうな顔を徹に向けて聞く。内心では笑顔を維持するのも大変である、主に猛獣を全力で押さえているせいで。今度こそ静音が落ち着く言葉を言って欲しい!!そろそろ限界だ…。 「そんなわけないじゃん!」  静音からの圧力がほんの少し減る。その調子だ!! 「じゃあ、なんで付き合ってるの知られると恥ずかしいと思うの?自慢しちゃえばいいじゃん!」 「千絵って学校でも町でも人気あるんだから、町中で俺と付き合ってると知られると恥ずかしく感じるじゃん!」  この言葉で自分本位だけでなく千絵ちゃんの事も気にしての行動だったと分かって、ようやく猛獣は人間に戻る。抑える必要がなくなったので額の汗を拭って俺も落ち着く。  思春期特有の思い上がりみたいなものだ。静音は女の子がどう思うかを徹に説明し始めたので、俺は傍観者に徹する。  静音からの話が終わると徹は千絵ちゃんの所に話に行くと言った。預かっていたマフラーを返した。  帰り際に静音と接触できたのは自分のおかげだと徹がいうので、俺は素早く自分の腰に手を回したが慣れた感触がなく非番だったことを思い出す。残念だ。  徹は怯えた顔をして逃げるように出ていったが、今の事に関しては同情する気はない。
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