第2話 ゲーム開始

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第2話 ゲーム開始

「ホームセンターONEにご来店くださって誠にありが――」  繰り返されている店内アナウンス、シュウゴはどうやら生きているらしい体全体をざっと視線で流してみてから立ち上がる。痛みがあった左胸にも外傷は無くて、手を当ててみると確かに脈打っていた。  自分の置かれている状況を考えることでフル回転の頭の中でうっすらとホームセンターという単語が響いている。よーく見なくてもシュウゴが立っている場所はホームセンターの中だった。全国的なチェーン店で住んでいる市内にもいくつかあるホームセンターの、目にしたことがあるロゴが壁や値札に張り付いている。 「ホームセンターONEにご来店くださって誠にありがとうございます。本日は1人のお客様が息絶えれば閉店となります」  シュウゴはキョロキョロと右に左に動かしていた首を止めて固まる……三度繰り返されている店内アナウンスの三回目にしてようやく、恐ろしい言葉をアナウンスしていることに気づいたのだ。1人の客として買い物しているときのように店内アナウンスなど聞き流していた。  え……今お客様が息絶えればって……何だ?何を言っているんだ?  もう一度アナウンスが流れないかと耳を澄ましたがアナウンスは三回で終わった。  シュウゴは現在地である店の端っこらしい場所から、移動を始めた――誰かいないか、出口はどこだ。なんだか物騒で良からぬことに巻き込まれている感じがする。考えるのは一旦店の外に出てからにしよう。 「きゃあああああああああああああああ!!」  早歩きで通路を行くシュウゴの下へ店内を駆け抜ける女の悲鳴が届く。その叫ぶように精一杯の声量を出していて金属を切り裂いたような高い音にシュウゴの肩がすくむ。  声の聞こえ方からしてそんなに遠くない。シュウゴは進んだ先の店を横断する長い通路の先で声を出したであろう女を見つけた。  眩しいほど天井にある照明の光を反射する白い床。スーパーよりも広々としたその通路の上で茶髪の女が後ろに手をついて倒れていて、その先にはついさっきシュウゴを襲った男が赤く塗られた包丁を手にしている。そして、足元には血を流して倒れる別の男がいる。
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